時代が求める「プロ人材」活用
「プロ人材」とは、専門的なスキルを持つ人材が、大企業などに勤務しながら副業や兼業として地方の中小企業をサポートする、いわば「経営の助っ人」です。政府の働き方改革により労働人材の流動性が高まり、大手企業に勤める人材の副業や兼業が解禁されたことで、人手不足やDX化に課題を抱える地方の中小企業でも、新たな雇用をせずに専門家の知見を活用できる時代になりました。
坂井市は、プロ人材と事業者のマッチング、そしてその後のプロジェクト立ち上げ支援に実績のある支援事業者「カルビン」(東京都港区)と提携し、本事業を展開しています。今年度は大幅な予算が組まれ、過去最大の20社を募集する計画です。販路拡大、人手不足、AI技術の進化など、変化の激しい経営環境において、外部の即戦力への期待が高まっています。
費用対効果と伴走支援の魅力
セミナーでは、カルビン社の東慶親代表取締役が進行役を務め、プロ人材活用のメリットを具体的に解説しました。プロ人材への報酬は月3万~5万円(実働10時間程度)と、新たな従業員を一人増やすよりも費用を抑えられる点が強調されました。また、事業者の課題に寄り添いながらプロジェクトを推進する「伴走支援コンサルタント」の存在も、本事業の大きな特徴です。カルビン社の太田千郷さんは、事業者が「どのように課題を解決したら良いか分からない」「どんなプロにお願いしたら良いか分からない」といった悩みを抱える場合でも、親身にサポートを行うことを紹介しました。
成功事例が示す確かな成果
セミナーでは、実際にプロ人材を活用し、成果を上げた地元企業の事例が紹介されました。

長谷川造園(春江町)の長谷川晃大社長は、プロ人材の支援により独自のAI見積もりシステムを構築した事例を共有しました。これにより、以前は1週間ほどかかっていた見積もり提示がわずか30秒で可能になり、契約率の向上に繋がったと語りました。AI技術の進化が加速する中で、システムのさらなるバージョンアップにも取り組んでいるとのことです。
また、繊維製造・染色のユティック(春江町)の小林美一さんは新規事業推進プロジェクトでの成果を、村田石材店(三国町)を経営する村田ひとみさんは、ほぼゼロから始めたEC事業が短期間で売上を伸ばし、新たな事業の柱が生まれた経験を語りました。これらの事例は、プロ人材が経営者の抱える多様な課題に対し、具体的な解決策を提供できることを示しています。
セミナー後のアンケートでは、参加した事業者12社のうち11社がプロ人材活用に「やってみたい」と回答しました。三国町で海鮮加工品製造・卸売りを営む女性経営者からは、「昔ながらの商品を扱っているが、売上アップや新商品開発に着手したい。SNSやデジタルに強い人材が社内にいないため、ぜひプロ人材を活用したい」と前向きな声が聞かれました。
カルビン社 東慶親社長が語る事業の展望
カルビン社の東慶親社長は、坂井市のプロ人材活用事業が全国でも先行的な取り組みであると述べました。2023年度に実証事業としてスタートした坂井市は、カルビン社にとって3件目の取引先であり、約3年間にわたりプロ人材と活動を共にする事業者も存在するといいます。今年度、坂井市が20社を募集することに、東社長は「坂井市の意気込みと本事業への期待の高さを感じています」と語りました。

中小企業が自社の課題を明確に把握できていないケースも多いという現状に対し、東社長は「セミナー内で自社課題を整理できる仕組みを作りました」と説明しました。また、参加者に対して「その課題が解決できたら、会社にとってどんないいことがありますか?」と問いかける理由について、「課題解決は通過点であり、その先にどのような展開が待っているか、次のシナリオを考えてもらうためです。例えば従業員の賃上げに繋げたいなど、経営者には目標を持つことでモチベーションを高めてもらいたい」と、事業者の未来を見据えた支援の姿勢を示しました。
今後の募集について
坂井市は今年度、国の「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」を受け、予算1200万円で事業を展開しています。プロフェッショナル人材マッチング支援事業の活用を希望する事業者20社を募集中です。既に11社が前向きな姿勢を示していることから、坂井市商工労政課は「経営課題の解決や専門人材不足に有効な手法であるため、関心がある事業者はお早めに」と呼びかけています。
申し込みや問い合わせは、坂井市商工労政課(電話0776-50-3153)または坂井市商工会を通じて行うことができます。
