アートストレージとホテルが融合した「KAIKA 東京」、『KAIKA TOKYO AWARD 2026』受賞作品を発表

受賞作品と審査員選評

KAIKA TOKYO AWARD 2026 大賞

「生々流転」長友 由紀/Yuki Nagatomo

長友由紀氏の作品「生々流転」

  • 審査員選評 秋元 雄史氏
    長友 由紀氏の「生々流転」は、乳がん治療の経験をきっかけに、身体や生命のあり方を見つめ直した作品です。人間の身体を原子の結びつきとして捉え、死を自然への回帰として受け止める視点には、深い思索と静かな受容の感覚が表現されています。友禅染の技法を用いながらも、黒とグレーを基調とした抑制された色彩で制作されており、描かれた人物の線がいっそう際立ち、身体の存在を強く印象づけています。個人的な経験を普遍的な生と死の問いへと昇華させている点が特に高く評価されました。

  • 審査員選評 黒澤 浩美氏
    寒色の水色が広がる地の上に、黒の線描による像が大胆かつ繊細に描かれ、中央の身体像を軸に小像が雲のように連なっています。独特の秩序と広がりが生まれ、地と図像の明確な対比が冷静で静謐な緊張感を画面にもたらしています。光背を思わせる像の反復は仏教絵画を想起させ、高い精神性を意識した世界観を立ち上げています。友禅の精緻な線描によって個人的経験を象徴的な図像構造へと昇華している点に、本作の構想力と表現の強度が認められます。

  • 長友 由紀 プロフィール
    1991年 神奈川県生まれ。2017年 東京藝術大学美術研究科工芸専攻染織領域 修了。2019年 金沢卯辰山工芸工房 研修者 修了。

KAIKA TOKYO AWARD 2026 秋元雄史 賞

「HOPE」吉行 鮎子/Ayuko Yoshiyuki

吉行鮎子氏の作品「HOPE」

  • 審査員選評 秋元 雄史氏
    吉行 鮎子氏の「HOPE」は、日常の感情や気配のようなものをすくい上げ、絵画として提示しようとする試みです。人間の内面には言葉では説明しきれない感情が潜んでいますが、彼女はそれを新しい視点から見つめ直すことで、前向きな感覚へと転換しようとしています。空を見上げたときに心が軽くなるような感覚を想起させる本作は、観る者の心の奥に静かに働きかける力を持っています。素直で率直な表現の中に、絵画の可能性を探ろうとする姿勢が評価されました。

  • 吉行 鮎子 プロフィール
    1986年 岡山県生まれ。2009年 沖縄県立芸術大学卒業。

KAIKA TOKYO AWARD 2026 黒澤浩美 賞

「キルティングのコンポジション」正木 美穂/Miho Masaki

正木美穂氏の作品「キルティングのコンポジション」

  • 審査員選評 黒澤 浩美氏
    ビニールのキルティングを切断し、縫合して平面へ再配置するこの作品は、支持体を所与の面ではなく、生成される皮膜として捉え直している点が興味深いとされています。コラージュ以後の絵画が引き受けてきた異素材の導入を、ここでは触覚の領域へと引き寄せた点が重要です。縫い目は筆致に代わる運動の痕跡となり、柔らかな膨らみは皮膚の感覚を呼び起こします。見る行為を触れる感覚へと静かに転位させる点を、絵画の新たな知覚として考察していると評価されました。

  • 正木 美穂 プロフィール
    東京都生まれ。2005年 女子美術大学芸術学部絵画科洋画専攻 卒業。2007年 多摩美術大学大学院美術研究科 修了。

入選作品と収蔵展示について

受賞3作品に加え、以下の12点が入選作品として選出されました。これらの作品は、2026年3月より約2年間、「KAIKA 東京」の共用部および一部客室にて収蔵展示されます。また、『KAIKA TOKYO AWARD 2024』の受賞作品である戸張 花氏の「MASS」、倉敷 安耶氏の「Transition #Ophelia」、足立 篤史氏の「Apollo 11_Ham the Chimp」も引き続き当館で収蔵展示されます。

入選作品のコラージュ

  • 「Flowing shape」大井 真希

  • 「森のメロディ」大河原 健太

  • 「やっとあえたね。」桂 典子

  • 「No.0054」SHOTO KOHAGURA

  • 「“前後の吉凶がどうであれ、最後は悔いのない幕引きを”」坂本 那々莉

  • 「一線」高橋 呼春

  • 「還る日までの庭」寺内 木香

  • 「黒/霧の間 白/スコールの跡」TOON/陶音

  • 「迷子の風景No.243」長谷川 彩織

  • 「あらわし彫刻」村上 直樹

  • 「揺らめきの瓶」山本 恵海

  • 「心地の在処」余宮 飛翔

『KAIKA TOKYO AWARD』の特徴

「KAIKA 東京」は、才能あるアーティストの発掘を目的として『KAIKA TOKYO AWARD』を2年に1度開催しています。本アワードは、芸術・文化支援による豊かな社会づくりの取り組みとして、メセナ活動認定制度『This is MECENAT 2025』に認定されています。

  1. 365日、作品が社会と接し続ける仕組み
    今年で4回目を迎えた本アワードは、累計応募総数が1,166点に達し、多様なアーティストの登竜門として認知が広がりつつあります。単に賞を授与するだけでなく、選出作品を約2年間にわたり館内で収蔵展示するのが特徴です。国内外から年間5万人以上(2025年1月~12月の実績合計・延べ宿泊者数)が訪れるホテルという特性を活かし、多様なゲストとの出会いが生まれています。

  2. 実例につながるキャリア形成支援
    館内展示をきっかけとした作品購入や、他施設での展示・芸術祭への参加など、具体的な展開事例が生まれています。展示期間中の外部出展や販売も柔軟に認められており、アーティストの活動機会を広げる仕組みが整えられています。

  3. 大型作品の保管・展示という課題へのアプローチ
    元倉庫を活かした収蔵展示空間と長期的な作品公開は、特に大型作品に取り組む作家にとって貴重な表現の場となっており、次世代の創作活動を支える一助として機能しています。

受賞作家インタビュー公開

2022年の本アワードで小山登美夫 賞を受賞し、4年間の展示とGALLERY ROOM・A(KAIKA 東京 1Fのアートギャラリー)での個展を終えた河合 真里氏のインタビュー記事が公開されました。

河合真里氏のインタビュー

『KAIKA 東京』について

『KAIKA 東京 by THE SHARE HOTELS』は、アート作品を公開保管するアートストレージとホテルが融合した、コンテンポラリーアートの新しい拠点です。元倉庫ビルをリノベーションした空間には、アートギャラリーのための9つのアートストレージと、一般公募『KAIKA TOKYO AWARD』により集められた作品が収蔵展示されており、アートシーンの舞台裏のような場所で国内外のゲストに新しい鑑賞体験を提供しています。

KAIKA 東京の共用部

KAIKA 東京の客室

  • 施設名:KAIKA 東京 by THE SHARE HOTELS

  • 開業日:2020年7月15日

  • 所在地:東京都墨田区本所2-16-5

  • 交通:都営浅草線「浅草駅」徒歩8分、「本所吾妻橋駅」徒歩9分、都営大江戸線「蔵前駅」徒歩9分

  • 客室数:73室

  • 定員:239名

THE SHARE HOTELSと株式会社リビタについて

THE SHARE HOTELSは、株式会社リビタが2016年3月より展開するライフスタイルホテルブランドです。「地域との共生」を目指し、日本各地の文化を担うプレイヤーと共にホテルを作り、人々が集う活動の受け皿として地域に開いた場づくりをしています。株式会社リビタは、「社会、くらしをリノベーションし、あなたと環境にとって豊かな未来をつくる」を経営ビジョンに掲げ、多岐にわたる事業を展開しています。

『KAIKA TOKYO AWARD』の詳細は、特設サイトをご覧ください。
https://www.thesharehotels.com/kaika/award/