アマミノクロウサギの個体数は駆除開始前から増加
環境省が2023年6月1日に公表したアマミノクロウサギの個体数推定(推定中央値)によると、猫の捕獲(防除)が始まる前に、既に個体数が大幅に増加していたことが示されています。
| 年度 | 推定個体数 |
|---|---|
| 2003年度 | 2,329頭 |
| 2013年度 | 6,743頭 |
| 2017年度 | 11,592頭 |
| 2021年度 | 19,558頭 |
2003年度の2,329頭から2017年度の11,592頭へと、この期間で個体数は約5倍に増加しました。環境省は、この期間に奄美大島の森林には600〜1,200頭のノネコが生息し(2011〜2014年のカメラ調査)、集落には登録された飼い猫が4,444頭(2017年12月末時点)いたと推定しています。ノネコの捕獲が森林域で開始されたのは2018年7月であり、アマミノクロウサギの「5倍」の増加は、この駆除が始まる前に達成されていたことになります。

駆除の前後で増加率に大きな変化は見られず
ノネコの駆除が開始された2018年度の前後4年間を比較すると、アマミノクロウサギの増加率に顕著な変化は見られません。
-
駆除前4年間(2014年度から2017年度):毎年 約1.145倍
-
駆除後4年間(2018年度から2021年度):毎年 約1.140倍
どうぶつ基金は、このデータから「駆除による増加の加速が、環境省の数字には表れていない」と指摘しています。

猫1頭の捕獲に約49万円の費用
環境省が超党派の動物愛護議員連盟「ノイヌ・ノネコPT」に提出した資料によると、奄美大島における猫1頭あたりの捕獲費用は高額に上っています。
| 年度 | 環境省の契約額 | 捕獲数 | 1頭あたりの額 |
|---|---|---|---|
| 2018年度 | 2,001万円 | 43頭 | 46.5万円 |
| 2019年度 | 3,960万円 | 125頭 | 31.7万円 |
| 2020年度 | 3,887万円 | 27頭 | 143.9万円 |
| 2021年度 | 4,620万円 | 124頭 | 37.3万円 |
| 2022年度 | 6,024万円 | 101頭 | 59.6万円 |
| 5年計 | 2億493万円 | 420頭 | 48.8万円 |
2018年度から2022年度までの5年間で、総額約2億493万円が投じられ、420頭の猫が捕獲されました。これは1頭あたり約48万7,935円に相当します。
一方で、どうぶつ基金の2025年度さくらねこ無料不妊手術事業の実績では、1頭あたり6,012円(不妊去勢手術・ワクチン・ノミ・ダニ駆除を含む)で、約3万4,000頭に無料不妊手術を実施できる費用と同額です。

捕獲されているのはどのような猫か
環境省の公式カウントでは「ノネコ 420頭」とされていますが、内訳は示されていません。環境省の希少種保全推進室長は、議員連盟の場で「ノネコと野良猫の区別が難しいことは認識している」と述べています。
捕獲された猫のうち、不妊去勢手術済みの「さくらねこ」の割合は、1年目の11%から5年目には46%へと増加しています。また、飼い猫とみられる猫が30頭捕獲され、うち19頭が飼い主に返還された事例も報告されています。
環境省の見解と公式文書の食い違い
環境省は2022年のメディア取材に対し、「アマミノクロウサギがノネコに捕食されているのは間違いありません。危険があれば科学的な根拠が不十分でも、早めに対策をするというのが保全生物学の鉄則です」と回答しています。
また、「その数が増えていようが減っていようが、個体が食べられている。それ自体が世界自然遺産登録にマイナスになると我々は感じています」とも述べています。
しかし、環境省の「奄美大島における希少種保全に関するQ&A」には「これらの事業は固有種・希少種の保全のために実施しているものであり、世界自然遺産登録を直接の目的に実施しているものではありません」と記載されています。どうぶつ基金は、この公式文書と取材での回答の食い違いについて説明を求めています。
特に「その数が増えていようが減っていようが」という発言は、アマミノクロウサギが5倍に増えたという環境省自身のデータが、駆除の是非を判断する材料とされていないことを示唆すると、どうぶつ基金は考えています。

環境省自身がTNRを成功させている事実
環境省は、奄美の集落地区においてTNR活動を実施し、2025年度のロードマップ推進評価によれば、集落全体の野良猫1,168匹のうち1,100匹(94.2%)が不妊去勢済みであると公表しています。TNRの累計は5,535頭に上ります(2022年度時点)。
この成功にもかかわらず、環境省が全国の猫に「防除推進外来種」の指定を適用しようとしていることに対し、どうぶつ基金はその一貫性の欠如を問うています。
どうぶつ基金 理事長 佐上邦久氏のコメント
佐上邦久理事長は、「猫はずっと昔からアマミノクロウサギを食べてきましたが、それでも絶滅しませんでした」「駆除が必要だという根拠が、環境省の数字のどこにもありません」と述べています。また、「猫の数は、駆除ではなく適正飼養とTNRで減らせます。これは私たちの主張ではありません。環境省自ら18年前に書き、奄美で実践し、94.2%の達成率という数字で自ら示していることです」と、TNRの有効性を強調しています。
「全国のイエネコを『防除推進外来種』にする理由を、私たちはまだ聞いていません」と、現在の環境省の方針への疑問を呈しました。
署名活動へのご協力のお願い
どうぶつ基金は、環境省の方針に対し、以下の署名活動を実施しています。
-
イエネコ(ノネコも)を「防除推進外来種」にしないよう、環境大臣に求めます: https://c.org/fXYrCvvjWn
-
世界遺産を口実に、奄美や沖縄の猫を安易に殺処分しないでください!: https://c.org/b5znBYGSMh

公益財団法人どうぶつ基金について
どうぶつ基金は1988年に設立された民間・非営利の動物愛護団体です。飼い主のいない猫の無料不妊手術「さくらねこTNR」や多頭飼育崩壊の犬・猫の無料不妊手術、里親探しの支援など、幅広い活動を行っています。
-
どうぶつ基金 ちきゅう部: https://www.doubutukikin.or.jp/activity/earthclub/
