イエネコの「防除推進外来種」指定案に動物愛護団体が反対、環境大臣へ要望書を提出し署名活動を開始

イエネコの「防除推進外来種」指定への反対表明

公益財団法人どうぶつ基金は、環境省が現在進めている「生態系被害防止外来種リスト」の見直しにおいて、イエネコ(飼い猫・野良猫)を「防除推進外来種」に位置づける方向で検討されていることに対し、強く反対の姿勢を示しています。2026年7月4日にはオンライン署名活動を開始し、7月6日には環境大臣宛てに要望書を提出しました。

複数の子猫が写っており、環境大臣に対しイエネコを「防除推進外来種」にしないよう求めるオンライン署名活動が示されています。現在6,560人の賛同が集まっています。

「防除」とは、野生の個体群を取り除くことを指します。どうぶつ基金は、猫を外来種対策の枠組みで「念のため駆除」の対象と位置づけること自体が、科学的にも制度的にも適切ではないと考えています。

環境省によるリスト見直しの背景

複数の報道によると、環境省は、約10年ぶりとなる外来種リストの見直しで、これまで野生化した「ノネコ」に限られていた対象を、野良猫や飼い猫を含む「イエネコ」に拡大し、「防除推進外来種」に位置づける方向で最終調整を進めているとされています。環境省への確認では、現在この方針の最終段階にあるとのことです。すでに国民が意見を提出できるパブリックコメント(令和8年4月2日〜5月1日)は終了しており、正式な決定・公表が目前に迫っています。

6月末の報道以降、この問題への社会的な関心が高まる中、どうぶつ基金は決定が確定する前に反対の声を届けるため、署名活動と要望書の提出を決定しました。

リストの法的拘束力について

このリスト自体には法的拘束力や罰則はありません。また、猫がブラックバスのような「特定外来生物」(外来生物法)に指定されるわけでもないことが確認されています。どうぶつ基金は、これらの点を踏まえた上で、以下の理由から反対を表明しています。

石垣の上で、キジトラ柄の猫が緑の葉っぱに乗せられたキャットフードを食べている。耳にはV字カットがあることから、地域猫である可能性が高い。

どうぶつ基金が求める4つの要望

どうぶつ基金が環境大臣に提出した要望書には、主に以下の4つの点が記されています。

  • イエネコ(飼い猫・野良猫)を「防除推進外来種」として扱うことを中止すること。

  • ネコを「防除推進外来種」から削除する方針に賛同すること。仮に科学的根拠とエビデンスによりイエネコが在来種を絶滅に追い込む危険が証明され、猫への対応がどうしても必要となる場合も、駆除ではなく人道的・科学的手法によること(希少種保全を放棄するものではありません)。

  • 猫の飼養・個体数管理は、外来種対策ではなく動物愛護管理法に基づく適正飼養とTNR・地域猫等の人道的手法で行い、屋外の猫・地域猫・TNR・給餌の制限や関係者への不当な圧力を行わないこと。

  • 猫の取扱いに関わる判断は、動物愛護の専門的知見と当事者を加えた構成のもとで、改めて検討すること。

反対する主な理由

要望書に記された反対の主な理由は以下の通りです。

  • 本土で猫が生態系を脅かした科学的根拠は確認できない: 環境省のレッドリストには、飼い猫・野良猫が単独の原因で絶滅させた在来種の記載は一例もありません。

  • 奄美のクロウサギの回復は、ノネコ駆除では説明されていない: アマミノクロウサギが回復に向かった主な要因はマングースの防除とされており、ノネコの駆除によるものとは説明されていません。

  • IUCNの高リスク評価は「捕食者不在の海洋島」が前提: ハワイなどと、在来の捕食者がいる奄美・沖縄では前提が異なります(IUCN GISD)。

  • 検討会の委員自身が「適正飼養・人の管理」を核心としている: 第5回議事概要では、掲載を推進する委員でさえ「対策=駆除という考えは古い」と述べています。

  • 国際基準(ICAM)も、駆除ではなくTNR等の人道的管理を推奨

  • 猫の飼い方は動物愛護管理法の適正飼養の領域であり、外来種対策で規律すべきものではありません

  • 判断を行った検討会の構成員に、動物愛護行政(環境省動物愛護管理室)や動物保護・愛護団体は含まれていません

法的拘束力のないリストでも問題となる理由

本リストに罰則はないものの、「防除推進外来種」とは、野外の個体群(野良猫・ノネコ)について「防除=取り除くこと」を国が推進する方向性を示す区分です。しかもこれは、沖縄などの特定地域に限定されず、全国のイエネコ(飼い猫・野良猫)を対象とするものです。

「飼い猫は対象外」と説明されても、その除外は「屋内で適切に飼育」が条件となるため、家と外を行き来する外飼いの猫は含まれません。ペットフード協会の調査によると、飼い猫は約885万頭に上ります。報道では対象の背景を「屋外で餌付けされた猫などが希少動物を捕食していること」としており、環境省が「家の中の猫は対象外」と説明することは、裏を返せば「外に出る猫は対象」であることを示唆しています。

実際、第5回検討会の議事概要では、種名掲載を推進する委員自身が「猫問題の主役は野良猫だ」「野良猫を除外してしまっては実効性が失われる」と述べており、対象が町の野良猫であることが明確にされています。屋外の猫は、飼い主のいる猫も地域猫も野良猫も見分けがつかないため、全国どこでも一律に対象とされる懸念があります。このリストの正式名称は「我が国の生態系等に被害を及ぼす“おそれ”のある外来種リスト」であり、被害が生じる前の段階から防除の対象としうる枠組みです。

また、法的拘束力のある「特定外来生物」では、ある生物が「防除すべき外来種」と位置づけられた後、条例によるリリース禁止や回収、集中的な駆除、罰則といった措置が段階的に積み重ねられてきました(例:滋賀県の外来魚対策、奄美でのマングース根絶)。どうぶつ基金は、諮問的なリストへの掲載であっても、それが屋外の猫・給餌・地域猫への圧力や、将来の措置の起点となりうることを懸念しています。

「防除は駆除に限らず保護やTNRも含む」という説明もありますが、それでもなお、“取り除くこと”を前面に出す「防除推進」の区分で扱う必要はなく、真に適正飼養・TNRを目指すのであれば、動物愛護管理法の枠組みで行うべきだと考えられます。

署名活動と要望書

どうぶつ基金は、Change.orgでオンライン署名活動を開始しました。集まった声は、要望書とともに環境省への働きかけに活用されます。

ケージの中にいる茶トラの子猫が、口を開けて鳴いているような、あるいは威嚇しているような表情を見せている。大きな瞳が印象的で、愛らしいが少し緊張感が漂う。

公益財団法人どうぶつ基金からのメッセージ

理事長の佐上邦久氏は、「夕方、帰宅すると玄関で待っている猫。夜明けに、名前をつけた地域の猫たちへそっとごはんを置く人。耳の先を桜の花びらのように切った『さくらねこ』――。私たちが全国の自治体や地域の方々と、長い時間をかけて守ってきたのは、そうした一つひとつの、かけがえのない命です。私たちは、屋内飼育の大切さも、殺処分ゼロも、行政とともに訴え続けてきました。その同じ国が、外に生きる猫を『念のため駆除』の対象と呼ぼうとしている。この現実に、黙っているわけにはいきません。猫の運命が、猫をいちばんよく知る当事者を交えないまま決められようとしている今、どうか、猫を想う多くの方の力を貸してください。」とコメントしています。

公益財団法人どうぶつ基金について

「公益財団法人どうぶつ基金」のロゴマークです。ピンク色の猫、緑色の鳥、青色の魚、茶色の象を組み合わせたカラフルなデザインで、様々な動物への支援と共生を象徴しています。

公益財団法人どうぶつ基金は、1988年の創設以来、一貫して猫をはじめとする動物の福祉と適正管理に取り組んでいます。全国598の自治体と協働して「さくらねこ無料不妊手術事業(TNR)」を実施し、これまでに44万頭を超える野良猫や多頭飼育崩壊の猫に無料で不妊手術を行ってきました。環境省とも動物愛護管理の分野で連携し、これまでに35を超える自治体から表彰状や感謝状を受けています。

参考・出典一覧