映画『PILA』:ワンテイクムービーへの挑戦

映画『PILA』は、病気の夫の病院費のために政府の医療援助プログラムに参加する75歳のレジーナの物語です。列に並び、自身の病に耐えながら、不当な状況に立ち向かい、行方不明の孫娘を探すために一時的に列を離れるという、緊迫したドラマが描かれています。
本作品はジャッキー・ウー氏がプロデューサーと出演を務め、アドルフ・ボリナガ・アリックス・ジュニア氏が監督を務めました。モスクワ国際映画祭(MIFF)にノミネートされたこの作品は、ジャッキー・ウー氏にとって初のワンテイクムービー(カットなし)への挑戦でした。彼は、NGが出れば最初から撮り直すという新しい形の映画制作が、モスクワで認められたことを非常に光栄に感じているとコメントしています。作品では、シリアスな演出と役者のクオリティが一体となるワンテイクムービーの醍醐味が表現されているそうです。
ジャッキー・ウー氏は、政府からの生活資金援助の列に並ぶ外国人として、アンフェアな状況に挑む役柄を演じました。撮影時には、エキストラを含む全俳優がNGを出せないという、かつてない緊張感の中で数時間を過ごしたと語っています。また、製作総指揮としてワンテイクムービーに挑戦したのは、過去に観た作品に感銘を受け、自身もエンターテインメントの原点を確かめたいという強い思いがあったからだそうです。
映画『WARLA』:LGBTQIA+の物語が世界で評価

映画『WARLA』は、家族に受け入れられずに悩む19歳のトランスジェンダー女性、キットカットの物語です。彼女は、トランスジェンダー女性だけの犯罪組織「WARLA」のリーダー、ジョイスに引き取られます。WARLAは外国人を誘拐し、メンバーの性別適合手術の資金を得ていましたが、キットカットは次第にWARLAのやり方に疑問を抱き始めます。
ジャッキー・ウー氏が出演し、ケビン・Z・アランブラ氏が監督を務めたこの作品は、BFIフレアロンドンLGBTQIA映画祭インターナショナル・プレミアに選出されたほか、シネマラヤ フィリピン インデペンデント映画祭特別上映、ロンドン国際映画祭プレミア、カナダ国際映画祭プレミアOfficialセクション、インド国際映画祭コンベンション、マカオ国際映画祭プレミアOfficialセクション、メキシコ国際映画祭プレミア公式セクション、アラバマ州歩道映画祭など、多くの国際映画祭で高い評価を受けています。
ジャッキー・ウー氏は、この特殊な役柄のオファーを受けた際、海外の撮影現場で出会ったトランスジェンダーの人々の苦悩を物語として表現したいという思いから、出演を決めたと述べています。彼にとって、今回の入選は非常に意義のあることだそうです。撮影中、主役の女性がパニック症候群になるほど激しい喧嘩のシーンがあったと語り、その中で女性の持つか弱さを強く感じたという印象的なエピソードも明かされました。
『WARLA』のケビン・Z・アランブラ監督は、この作品がフィリピン初のトランスジェンダー女性ギャングをめぐる事件に着想を得たものであり、彼女たちの生存、尊厳、そして姉妹愛を求める闘いが物語の中心にあると説明しています。また、ジャッキー・ウー氏の参加は、日本とフィリピンの創造的な架け橋としての役割を担い、両国に共通する感情の風景を浮き彫りにしていると評価しています。
「メイドインワールド」の視点で映画を創造する
ジャッキー・ウー氏は、今後の海外での映画制作について、「メイドインジャパン」「メイドインフィリピン」「メイドインイギリス」といった国籍に縛られず、「メイドインワールド」の視点で映画を撮ることが理想であると語っています。多様な国のシステムや技術、クオリティを融合させ、新しい撮り方を作り出すことが海外で映画を撮る理由の一つだそうです。
日本と海外の撮影現場の違いについては、海外ではテイクとテイクのつながりの記録がアバウトな点や、ロケ弁ではなくケータリングであること、そしてファーストカメラとセカンドカメラの位置が逆転することもある柔軟性を挙げています。特に、良い絵を撮るためであればメインの位置にセカンドカメラが来ることもある海外の現場の方が、良い映画を撮れる可能性を秘めていると感じているようです。
また、海外撮影で得た経験として、役者に対する演出で取り入れたいことがあると語っています。カメラが向けられた状態での待ち時間は、役者にとって休憩ではなく緊張の連続であるため、カメラと役者の間を遮ることでメンタルを大事にする映画監督でありたいと考えているそうです。
ジャッキー・ウー氏の輝かしいキャリア


横浜で生まれ育ったジャッキー・ウー氏は、中国人2世の父を持ち、エンターテインメントへの夢とアジアへの熱い思いから、1999年に香港でキャリアをスタートさせました。2001年以降はフィリピンを拠点に映画監督、俳優、歌手として活躍し、数々の映画の監督や主演を務めています。その功績が評価され、外国人として初めてフィリピン映画監督協会の正規メンバーとなり、歌手活動では「ゴールド・ディスク」を受賞するなどの実績も持ちます。中国、台湾、韓国などの映画にも出演しており、日本国内でも活躍の場を広げています。
彼の監督作品は、国際的な映画祭で多くの賞を獲得しています。
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2014年「KAIKOU 邂逅」主演:野村宏伸
- N.Y・マンハッタン国際映画祭 最優秀外国映画監督賞
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2017年「キセキの葉書」主演:鈴木紗理奈
- スペイン・マドリード国際映画祭 最優秀外国映画監督賞、最優秀海外映画主演女優賞
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2018年「ばあばは、だいじょうぶ」主演:寺田心、冨士眞奈美
- イタリア・ミラノ国際映画祭 最優秀外国映画監督賞、最優秀海外映画主演男優賞
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2023年「残照のかなたに」主演:林与一
- N.Y・マンハッタン国際映画祭 最優秀監督賞、最優秀作品賞
ジャッキー・ウー氏の更なる活躍に、今後も注目が集まることでしょう。
関連リンク
- ジャッキー・ウー氏公式プロフィール: http://www.jackywoo.com/inprofile.html
