2025年度新潟大学「イントレプレナー養成講座」が地域企業の新商品プロトタイプ創出と人材育成で成果

講座実施の背景

新潟大学は、新潟県が抱える「建設業の技術者不足」や「中小企業・小規模事業者の後継者不足」といった地域課題の解決を目指し、県内企業に勤務する社会人や起業を志す学生向けのリカレント教育に力を入れています。

本講座は、「新潟県 外国人技術者・企業変革リーダーリスキルプラットフォーム」内の「企業変革リーダー・リスキルプログラム」の一環として開講されました。NTT DXパートナーが講師とファシリテーターを務め、参加者はデザイン思考やビジネスモデルキャンバスといった新商品・サービス開発に必要な知識を習得。実在する企業の技術を活かした新商品・サービスを創出し、企業の新たな価値創造と、社会人・学生の人材育成を目指しました。

講座の内容

本講座は、以下の5つのDAYにわたって構成され、段階的に新商品開発プロセスを学びました。

DAY1:自己理解とデザイン思考、生成AIを活用したアイデア創出(2025年12月12日開催)

自己を深く理解し、実現したいことを明確にすること、そしてデザイン思考の基礎を学ぶことが目的とされました。自分発見ワークショップやデザイン思考ワークショップに加え、NTT DXパートナーが提供する生成AIツール「架空商品モール」を活用し、生活者の「あったらいいな」を基にした新商品アイデアの創出が行われました。

NTT DXパートナー「架空商品モール」

DAY2:顧客理解と新商品・サービスの検討(2025年12月22日開催)

参加企業の技術を深く理解し、検討している新商品・サービスの顧客像を明確にすることに焦点が当てられました。参加企業による技術体験を通じて、ペルソナを設定し、顧客の「悩み」や「欲求」を把握するためのインタビュー準備が進められました。

DAY3:サービスモデルの設計(2026年1月21日開催)

顧客インタビューで得られた仮説を振り返り、提供価値の整理、サービスモデルの設計、そしてペーパープロトの検討が行われました。商品コンセプトの設計とペーパープロトの作成を通じて、具体的なサービス像が形作られました。

DAY4:検討した新商品・サービスの再整理(2026年2月18日開催)

検討された新商品・サービスの市場性や収益性を確認する段階です。ビジネスモデルキャンバスを用いて全体像を把握し、TAM(Total Addressable Market)、SAM(Serviceable Available Market)、SOM(Serviceable Obtainable Market)の設計、さらに収支計画の作成が行われ、事業としての実現可能性が深掘りされました。

DAY5:参加企業経営層への新商品・サービスの発表(2026年3月9日開催)

講座の集大成として、参加チームが新商品・サービスを参画企業の経営層に向けて発表し、商品化に向けた検討が行われました。国立大学法人新潟大学 社会連携推進機構 副機構長 阿部 和久氏、株式会社青芳 取締役専務 秋元 哲平氏、新和メッキ工業株式会社 代表取締役社長 瀧見 直晃氏、株式会社NTT DXパートナー 代表取締役 長谷部 豊氏が講評者として参加し、活発な意見交換がなされました。

プレゼンテーションの様子

パネルディスカッションの様子

イントレプレナー養成講座の修了記念集合写真

講座の主な特徴と成果

特徴①:新商品の試作品が完成 — 企業の事業成長につながる具体的成果

本講座は、単なる知識習得に留まらず、具体的な新商品の企画とプロトタイプ製作という成果を生み出しました。

新和メッキ工業株式会社は、生成AIツール「架空商品モール」や他業種企業・学生との協働ワークショップを活用し、「毎日をもっと自分らしく」をテーマに2種類のメッキしおりを企画・試作しました。自社のメッキ技術を活かしたプロトタイプは展示イベントでも披露され、参加者からは「色合いが素敵」「発売されたら購入したい」といった好意的な声が寄せられています。同社の瀧見社長は、大学との連携を通じて自社の強みを再認識できたと振り返っています。

新和メッキ工業株式会社の技術を活かしたカラフルな金属サンプル

株式会社青芳は、ペットを大切にするユーザーをペルソナに設定し、木とレジンを組み合わせたメモリアルインテリアを企画しました。ペットとの思い出を封入できる商品コンセプトを構築し、参加者からは「友人に紹介したい」との声も上がっています。現在、2026年6月の展示会出展に向けて試作品製作が進められています。

特徴②:経営者自身が顧客起点の事業検討プロセスに参画

本講座の特筆すべき点として、代表取締役社長を含む経営層自身が受講に参加したことが挙げられます。新和メッキ工業株式会社の瀧見社長は、全5回の講座に自ら参加し、デザイン思考やペルソナ設定といったプロセスを社員とともに体験しました。

講座終了後、瀧見社長は「これまでプロダクトアウトの思考でビジネスを進めてきたが、マーケットインのマインドの重要性に気付かされた」と語り、長年の事業経営で培った思考様式に変化が生まれたことを明かしています。また、「社員や他社の方々に自社の取り組みを発表してもらう機会はこれまでなく、新鮮だった」と述べ、社内外を巻き込んだオープンな商品開発プロセスの価値を実感しています。

このように、経営者が講座に直接参加・関与したことで、意思決定が迅速化し、商品化に向けた取り組みが加速しました。本講座は、リカレント教育が新規事業創出と実際の事業成長に結びつくことを示す貴重な事例となっています。

今後の展望

新潟大学は今後も、協議会メンバーと連携し、「リカレント教育プラットフォーム」を通じて、新潟県における若者の地元定着の促進を目的とした新産業創出や職場環境の改善など、企業の魅力向上に継続して取り組んでいくことでしょう。

NTT DXパートナーもまた、本事業で培った運営ノウハウを蓄積し、産学官連携プロジェクトの創出と地域の価値創造に引き続き貢献していく方針です。