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今津灯台ツアーが拓く「見る観光」から「理解する体験」への新たな道

ツアーの主旨:多層の歴史を体験する

西宮・今津地区は、江戸時代から海運と酒造りを生業とする港まちとして栄え、海と酒と文化が交錯する独自の歴史を育んできました。その象徴の一つが、民間によって設置され、今も光を灯し続ける今津灯台です。

今津灯台は1810年、大関株式会社の創業家である長部家五代目・大坂屋長兵衛が、今津港を出入りする船のために私財を投じて建設しました。灘の酒は樽廻船で江戸へ運ばれ、「下り酒」として高い評価を得ており、今津港は酒荷の出港地として最も賑わった時期もありました。この灯台には、航海の安全と港の繁栄を願う人々の思いが込められており、以来200年以上にわたり、“酒と文化を運ぶ希望の灯”として親しまれています。

今回のツアーは、こうした“多層の歴史”を一日で立体的に体験できるプログラムとして構成されました。食、芸能、信仰、酒造りといった地域文化を一つの物語として体験し、次年度の商品造成につなげることを目的としています。

ツアー行程の紹介

今津灯台を「ゴール」とし、その成立背景を紐解く手がかりを地域の文化資源に散りばめた構成となりました。大関本社の歴史、海運と信仰を伝える西宮神社、地域文化が結実した能楽堂、そして地元食材を使った食の体験を通して、参加者は「なぜ今津に灯台が生まれたのか」を物語として理解できる内容です。

大関本社

ツアー冒頭のオリエンテーションでは、地元ケーブルテレビが制作した「今津灯台の歴史動画」を視聴し、参加者は物語の全体像を把握しました。この動画では、創建から215年が経過する今津灯台誕生の背景や港まちの歴史、樽廻船と海運の役割、灯台建設に込められた想いなどが紹介されました。

西宮神社

本殿での正式参拝後、酒造りの神様を祀る末社や酒蔵が寄進した灯籠、海の守り神を祀る社などを巡り、海と酒、信仰の深い結びつきを確認しました。往時の酒造家や船乗りたちが抱いた祈りが、現在の境内の佇まいに受け継がれていることを体感する時間となりました。

西宮神社での参拝風景

静和館(オリジナル弁当/酒ペアリング)

ツアーのために特別に開発された、地元兵庫産の食材を多く盛り込んだオリジナル弁当が提供されました。A5ランクのサロマ牛ステーキをメインに、ツブ貝を灯台の形に盛り付けた前菜や大関の酒粕を用いた「粕汁」など、「灯台 × 酒造り × 地元食材」を表現した料理が並び、参加者から高い評価を得ました。

静和館で提供されたオリジナル弁当

西宮能楽堂(文化解説・体験・「高砂」鑑賞)

今津では古くから教育・文化への貢献を重んじる気風があり、それが現在の能楽堂の存在につながっています。当日は能の所作体験が行われた後、能楽シテ方・梅若流の重鎮である梅若基徳氏による「高砂」が鑑賞されました。「住吉の神に呼ばれ、船で向かう」という物語は、今津の港文化とも響き合い、参加者からは「地域の歴史と能が一つにつながった」との声が聞かれました。

西宮能楽堂での文化体験

今津灯台(外観・内部見学)

長部家5代目大坂屋長兵衛が海の安全を願って建て、今も現役で灯りをともす今津灯台が特別公開されました。内部見学と港の景観を通して、江戸期から続く港まちの暮らしを追体験する機会となりました。

今津灯台の外観と内部見学の様子

魁蔵(マイクロブリュワリー見学)

灘五郷・今津郷の新しい酒文化として注目されるブリュワリーを訪れ、醸造現場を見学しました。伝統と創造が共存する今津の魅力を感じる時間となりました。

静和館(利き酒体験)

最後は、大関独自の味わいマップを使った利き酒体験で締めくくられました。酒の世界を“視覚化して理解する”仕組みがわかりやすいと好評でした。

大関独自の味わいマップを使った利き酒体験

関寿庵(土産物)

静和館でアンケートを記入後、大関ブランドショップ「関寿庵」で提出すると、今津灯台の写真がデザインされたオリジナルラベルのワンカップが配布されました。また、ここでしか買えない限定の日本酒や酒粕を使ったお菓子など、灯台を守ってきた日本酒産業から生まれた様々な商品を購入することができました。

ツアーの成果と今後の展望

今回のツアーは、文化財、食、芸能、酒造りを一体で体験できる点が「他地域にはない価値」として評価されました。特に、灯台を中心に西宮・今津の歴史が一本のストーリーとして理解できる構成は、「観光素材の新しい見せ方」として高く評価されています。

インバウンド向け商材を扱う参加者からは、想定される一般販売価格(6万円)に対し「十分に妥当」「これほど多面的に文化を体験できるツアーは少ない」との声が多く寄せられ、プレミアム観光商材としての高いポテンシャルが確認されました。アンケートでは、9割以上が「満足・とても満足」と回答し、8割以上が他者への紹介意向を示しています。再来訪意向も7割と高く、今後の商品化に期待が寄せられます。

今後は、本事業で新たに発見した今津灯台の魅力や地域とのつながりをさらに洗練させ、ツアー商品化、灯台イベント、PR動画制作、グッズ制作などを通じて「見える化」することで、今津灯台の価値をより多くの方に広めていく予定です。

日本財団 海と灯台プロジェクトのロゴ

海と灯台プロジェクト 新たな灯台利活用モデル事業

日本財団「海と日本プロジェクト」の一環である「海と灯台プロジェクト」は、灯台を中心に地域の海の記憶を掘り起こし、地域間、異分野・異業種間、日本と世界をつなぎ、新たな海洋体験を創造していくことを目指しています。その取り組みの一つである「新たな灯台利活用モデル事業」は、持続可能な灯台利活用事業の開発を実施する団体に対し、資金面および企画運営の助言等のサポートを行う事業です。灯台を訪れる人を増やし、海や周辺地域への興味関心を高めることを目的とした単体または複数の灯台を活用する事業企画が対象となります。

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