探査機との「対話」で宇宙をより身近に
本共創活動では、対話認知インターフェースプログラム「Mission Buddy」を活用し、探査機の運用において、適切な権限管理のもとで運用データや過去の知見に探査機との会話形式でアクセスする可能性を探ります。例えば、運用者が探査機に話しかけることで過去データにアクセスし、認知負荷を軽減する取り組みや、展示館を訪れた子どもたちが探査機に直接質問し、探査機が自身の声で答えることで、新しい宇宙コミュニケーション体験を創出することを目指しています。

共創活動の背景にある課題
宇宙機の運用では、運用者間のコミュニケーションは会話が中心ですが、宇宙機の状態把握や過去データの確認は視覚情報に依存するのが一般的です。探査機や国際宇宙ステーションのような長期運用では、過去のデータや知見を熟知した人材の経験が重要になりますが、これは視覚情報だけでは伝えにくい「暗黙知」であり、運用者の交代に伴う継承が大きな課題でした。
また、宇宙開発などの科学技術広報では、幅広い層に分かりやすく、正確に、多言語で情報を発信することが求められます。しかし、現状はテキストや動画を中心とした一方通行の発信が主流です。JAXA宇宙科学研究所の探査機は独自の魅力があり、情報発信も活発ですが、探査機自身が対話できれば、ミッションがより身近に感じられ、人々と宇宙との継続的な関係性を育む新たな体験につながる可能性があります。
「Mission Buddy」で広がる対話の可能性
本共創活動では、最新の音声合成技術と生成AI技術に加え、イディナが持つ対話基盤と人格設計基盤を活用し、探査機や人工衛星などの宇宙機が自らの“声”で語り、利用者からの問いかけに応答する対話認知インターフェース「Mission Buddy」の概念設計、試作、検証を進めます。
「Mission Buddy」は、単に宇宙機を擬人化するだけでなく、ミッション情報、観測データ、運用知見、研究成果を基盤に、研究者、運用者、教育機関、一般利用者を対話でつなぐ認知インターフェースとして位置づけられています。これにより、ミッションの理解促進、学習支援、科学コミュニケーション、知識の継承と活用、さらには多言語による情報発信など、幅広い価値の創出が期待されます。
この取り組みは、J-SPARCにおける事業コンセプト共創フェーズとして2026年度から2027年度にかけて実施されます。プロトタイプの構築と、実際の運用現場や相模原キャンパスの展示館「宇宙科学探査交流棟」での実証を通じて、対話型認知インターフェースの価値を検証する予定です。対象は、現在運用中または今後運用される宇宙機とし、各ミッションの特性や語り口を反映した対話体験の可能性が検討されます。
宇宙ミッションが「語りかける存在」へ
本共創活動が目指すのは、宇宙ミッションが「情報として伝えられる対象」から「人々に語りかけ、問いに応え、関係性を育む存在」へと変化する未来です。SF映画に描かれるような、人と宇宙機が対話しながら困難なミッションに挑む関係の実現に向けた第一歩として、誰もがミッションを自分ごととして感じられる新たな体験を創出します。
対話認知インターフェースは、宇宙開発にとどまらず、複雑な科学技術情報を分かりやすく、正確に、多言語で伝える基盤として、幅広い分野への応用が期待されています。将来的には、展示館・科学館などでの常設利用、配信コンテンツ、学習支援、技術継承支援など、科学技術と社会をつなぐ新たなコミュニケーションモデルの創出が目指されます。
イディナ株式会社 代表取締役 井手口 悦久氏のコメント
井手口氏は、「宇宙ミッションには固有の探究スピリットがあり、JAXAの探査機にはチームの知見や想いが宿っていると感じています。イディナは、個性化AI、対話デザイン、心に届く声の開発を通じて、そのスピリットを人が自然に受け取り、問いかけ、理解を深めていける関係性のインターフェースを醸成していきたいと考えています。」と述べています。

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https://www.edena.co.jp/
JAXA 宇宙科学研究所太陽系科学研究系 准教授 村上 豪氏のコメント
村上氏は、「宇宙ミッション遂行には常に強固なチームワークがあり、綿密なコミュニケーションが行われています。探査機が“声”を持つことは、探査機自身がチームの一員となりチームワークを強化できるだけでなく、その“声”や個性を通じて広く多くの人をミッションに惹きつけ、新たなクルーとして迎えることでミッションの拡大につなげられると期待しています。」と語っています。

