「共助に、企業はどう共創できるか」—経済人9名が陸前高田で出会った、共助の地域実装のリアル

陸前高田で生まれた共助の未来:経済人とNPOが地域実装のリアルを体験

認定NPO法人SET(岩手県陸前高田市広田町/理事長・三井俊介)は、2026年6月11日(木)から12日(金)の1泊2日で、経済同友会と新公益連盟による「フィールドビジット」を受け入れました。経済同友会「共助資本主義の実現委員会」のメンバーを中心とした9名の経済人が陸前高田を訪れ、共助の地域実装の現場で企業との共創について深く議論しました。

屋外で笑顔の9人がポーズをとっている集合写真

「共助資本主義」を現場で確かめる「フィールドビジット」

経済同友会は2023年に、民間企業がソーシャルセクターと連携して社会課題の解決に取り組む「共助資本主義」という概念を提唱しました。同年には、経済同友会・新公益連盟・インパクトスタートアップ協会が「共助資本主義の実現に向けた連携協定」を締結しています。

「フィールドビジット」は、この共助資本主義を「言葉」や「会議室の議論」だけで終わらせないための取り組みです。新公益連盟が運営し、企業の経営者やビジネスパーソンが社会課題の現場で活動するNPOを実際に訪れ、対話を通じてセクターを超えた理解を深める場として継続されてきました。

今回の訪問では、SETが受け入れ主幹となり、「共助の地域実装に、企業はどう共創できるか」をテーマに、影響力のある経済人とソーシャルセクターのリーダーが陸前高田で意見を交わす2日間となりました。

2日間のプログラム:会議室から食卓、古民家へ

1日目

参加者は一ノ関駅から陸前高田へ向かい、東日本大震災津波伝承館に隣接する道の駅「高田松原」を最初に訪れました。震災から15年が経過し、人口減少という現実と向き合い続ける地域の歩みを肌で感じるところからプログラムが始まりました。

午後は市内の会議室で対談が行われました。SETの理事長である三井俊介氏がSETの活動と陸前高田の復興、地域の現状について紹介しました。また、市の担当者と共に、若者を起点に地域の担い手を巻き込む関係人口事業など、市の官民連携の取り組みについて語られました。さらに、市議会議員も加わり、行政・議会・NPOが同じテーブルで率直な意見交換を行いました。

オフィスまたは会議室で撮影された、ビジネスパーソンと思われる男女13人の集合写真

夜は地元の飲食店で懇親会が開催され、陸前高田側から行政・民間合わせて8名が合流しました。参加者と地域の人々がテーブルを囲み、活発な意見交換が行われました。

2日目

朝はSETの拠点を視察しました。空き家を活用し、若者と地域が交流する場づくりの現場を実際に見て回りました。その後は古民家カフェ「Café 彩葉」でブランチを共にしながらのディスカッションが行われ、2日間で得た学びや気づきをそれぞれの言葉で持ち帰る対話の時間が設けられました。

現場が生んだ率直な言葉と「続く関係」への展望

懇親会や2日間の対話を通じて、参加者からは多くの気づきや感動の声が聞かれました。「経済合理性の外に越境して学習することの重要性、そしてそれがここではできる」「清々しいまでのNPOだ」「ありのまま自然体に地域に溶け込んで、地元の役に立ち、この地に来た人をも癒す。絶妙な加減で、複数の副次的効果を内包するリアルを、たくさん拝見できて本当に貴重でした」といった声が上がりました。SETの活動の確かさや、陸前高田の可能性と温かさに直接触れることが、経済の論理だけでは測れない学びとなったことが共通の感想として聞かれました。

夜の屋外で、多くの人々が木製のデッキに集まり、笑顔でカメラに向かってポーズを取っている集合写真

地域の側からも手応えのある声が上がっており、陸前高田市議の木村あきら氏は、「経済同友会と新公益連盟という普段関わらない、『外国の方々』が共通のなにかを求めて陸前高田を訪れていただいたというのはとても新鮮でした。今後の連携にぜひつなげていきたい」と語りました。陸前高田には数字では測れない関係性の蓄積があり、SETはその中心で若者と地域住民をつなぐ実践を積み重ねてきました。その現場が、経済の論理からはみ出した問いを持つビジネスパーソンの心を動かしたようです。

フィールドビジットを経て、参加者からは「次回はまた別のメンバーを連れて、第2回を実施したい」という声が上がっています。また、「共助の地域実装に、企業はどう共創できるか」という問いに対して、具体的な協業のアイデアも複数生まれました。例えば、企業の人材が一定期間地域に入る「共創出向」といった、企業のリソースを地域の現場に直接つなぐ形などが検討されています。

壁に多くの書類や写真が飾られた和風の部屋で、複数の男性が集まって打ち合わせをしている様子

一度きりの視察で終わらず、「別の誰かを連れて、また戻りたい」という感情が生まれることは、SETが陸前高田で積み重ねてきた関係性の蓄積が、外部のビジネスパーソンにも確かに届いた証と言えるでしょう。

SETは今後も、陸前高田を「経済合理性の外で、本質的な問いと向き合える場所」として、多様な人・組織との接点を育んでいく予定です。視察や協働に関心のある方は、ぜひSETまでお問い合わせください。

認定NPO法人SETについて

SETは「一人ひとりの”やりたい”を”できた”に変え、日本の未来にGoodなChangeを起こす」をミッションに掲げ、2011年の東日本大震災以降、岩手県を中心とした地域で若者と住民がともに学び合う仕組みを築いてきました。修学旅行民泊や大学生・社会人向けプログラム、地域コミュニティづくりなどを通じて、若者が地域の日常に関わり、住民とともに学び合う”続く関係”を育んでいます。2024年度は年間5,000人以上が参加し、現在では岩手県のみならず複数地域で活動を展開しています。若者の成長と地域の活力を同時に生み出しながら、人と地域の関係性そのものを基盤とした、持続可能な地域づくりに取り組んでいます。過去に2度の内閣総理大臣賞受賞歴があります。