展覧会のポイント
いまの世界と向き合う、大規模なインスタレーション作品
2001年9月11日以降のアメリカを背景に、戦争や植民地主義、そして現在も続く世界の危機的状況を主題とした大規模インスタレーションが紹介されます。現実に起きている出来事と鋭く接続しながら、社会と美術の関係を問いかけ、アートによる社会変革と自己変容の可能性が提示されます。
日本初個展!これまでの活動を制作年順にたどる
環境問題をはじめとする複雑な社会的課題に動機づけられたアイデアを、独自の方法によって表現してきたメル・チン氏の初期作から近作までが制作年順に紹介され、その活動の軌跡をたどることができます。地域住民との協働や科学的なアプローチを取り入れた長期プロジェクト「Revival Field」や「Fundred Dollar Bill Project」も紹介されます。
ヒロシマのための新作は、中沢啓治氏へのオマージュ
展覧会場の最後の部屋では、本展にあわせて制作された新作が展示されます。「はだしのゲン」の作者である中沢啓治氏の少年時代をイメージした彫像が、広島に投下された原子爆弾「リトルボーイ」を想起させる大太鼓の上に立ち、両手を差し伸べながら「ともに立とう」と静かに呼びかける作品です。
展示構成
第1部:奇妙な花の下で
第1部では、《私たちの民主主義の奇妙な花》を中心に、2002年から2006年にかけて制作されたメル・チン氏の代表作が紹介されます。2001年の同時多発テロ事件後に展開された一連の戦争は、国際秩序を大きく揺るがし、民主主義の名のもとに遂行される暴力の構造を改めて問い直す契機となりました。チン氏は破壊の象徴である爆弾を「民主主義の花」として提示することで、それを見上げる鑑賞者に現代社会の矛盾について再考を促します。
チン氏の関心は、アメリカ南北戦争で発明された弾丸や、ソビエト連邦時代に開発された小銃、ベトナム戦争やボスニア戦争で使用された武器へと広がり、さらにはアフリカやラテンアメリカにおける植民地支配、そしてアメリカによる原爆投下といった近代以降の暴力の歴史的連鎖にまで及んでいます。チン氏は、これらの暴力が社会や個人に残した傷跡を、日常的な素材を用いた造形へと変換することで、暴力の構造を独自の方法で可視化してきました。
今日、ウクライナ、ガザ、イランなど世界各地で暴力の連鎖が続くなか、チン氏が示す理念と破壊の矛盾は、いま改めて切実な意味を帯び、現代世界を理解するための重要な視点を与えてくれるでしょう。



第2部:逃れられない歴史
第2部では、初期作品からヒロシマのために制作された最新作まで、メル・チン氏の50年以上にわたる創作活動が紹介されます。1970年代の半ば以降、チン氏は幅広いメディアを自在に横断しながら、自身のルーツである中国思想や、西欧のメメント・モリの伝統、夢に現れるイメージ、さらにはシュルレアリスムやマルセル・デュシャン以降のコンセプチュアル・アートへの関心など、さまざまな要素を取り込み続けてきました。特定のスタイルやテーマにとどまることを拒み、常に変化を求める姿勢は、彼の作品を特徴づける重要な要素です。
その一方で、チン氏が1988年に制作した作品《逃れられない歴史》は、歴史がしばしば円を描くように同じ軌道をめぐり続ける現実を映し出しています。パレスチナとイスラエルの関係を扱ったこの作品は、約40年が経過した現在においても状況が本質的に変わらないという、重く静かな事実を浮かび上がらせ、歴史的な出来事や対立が人々の生活や記憶に長く影を落とし続けることを示しています。



開催概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 展覧会名 | 第12回ヒロシマ賞受賞記念 メル・チン展 |
| 会期 | 2026年7月25日(土)– 10月12日(月・祝) |
| 開館時間 | 10:00 – 17:00(入場は閉館の30分前まで) |
| 会場 | 広島市現代美術館 B展示室 |
| 休館日 | 月曜日(ただし9/21、10/12は開館)、9/24(木) |
| 観覧料 | 一般1,600円、大学生1,200円、高校生・65歳以上800円、中学生以下無料 |
| 主催 | 広島市現代美術館、朝日新聞社 |
| 後援 | 広島市教育委員会、中国放送、テレビ新広島、広島テレビ、広島ホームテレビ、広島エフエム放送、尾道エフエム放送 |
| 作品点数 | 約60点(彫刻、ドローイング、絵画、アニメーション、インスタレーションなど) |
関連プログラム
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オープン記念レクチャー:メル・チン
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日時:7月25日(土)14:00–16:00
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登壇者:メル・チン氏
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会場:広島市現代美術館 地下1階ミュージアムスタジオ
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定員:100名
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※参加無料、申込不要、通訳付。10:00より1F受付にて整理券配布。
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学芸員によるギャラリートーク
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日時:8月22日(土)、9月19日(土)15:00–16:00
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会場:広島市現代美術館 B展示室
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※要展覧会チケット、申込不要
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アートナビ・ツアー
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日時:毎週土・日・祝日 各日11:45–、14:45–
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会場:広島市現代美術館 B展示室
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※7/25、7/26、イベント開催時を除く。要展覧会チケット、申込不要。
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ヒロシマ賞について
ヒロシマ賞は、美術の分野で人類の平和に貢献した作家の業績を顕彰し、核兵器廃絶と世界恒久平和を希求する「ヒロシマの心」を美術を通して広く世界にアピールすることを目的に、広島市が平成元年(1989年)に創設した国際的な賞です。3年に1回授与され、これまでに11組のアーティストが受賞し、受賞記念展を通じて、その作品とともに広島の平和へのメッセージを世界に発信してきました。
都市名を冠した美術賞はいくつかありますが、カタカナで表記される「ヒロシマ賞」には、被爆地広島が掲げる平和の理念が明確に示されており、特別な意味を持っています。また、受賞者が実際に広島を訪れ、展覧会というかたちで広島と向き合うことも、この賞の特徴の一つです。これまでの受賞者たちは、その意義を理解し、それぞれの表現を通して「ヒロシマの心」を示してきました。
第12回となる今回は、メル・チン氏が受賞者に決定し、広島市現代美術館において受賞記念展が開催されます。広島から世界へ向けて平和への新たなメッセージを発信する機会となるでしょう。
受賞にあたってのメル・チン氏のコメント
この栄誉は言葉では言い尽くせません。私が、人為的気候変動による破壊に見舞われた地で暮らし、絶望の中にある無辜の民に対し残忍な爆撃が継続する現状を遠くから目撃し続けている中での受賞でした。米国市民である私は、紛れもない共犯行為を余儀なくされています。ヒロシマ賞は、この弁解の余地なき残虐行為を支持せず、加担に抗う決意を強固なものとしてくれます。さらに、複雑なアイデアや関係性を発展させ、暴力への抵抗と共感の輪の拡大に通じる理想を追求する手段とすべく全力を尽くすよう私を促してくれます。
2024年10月
ノースカロライナ州エジプト・タウンシップ
メル・チン
広島市現代美術館について
広島市現代美術館は、全国で初めて現代美術に本格的に取り組む公立美術館として1989年5月3日に開館しました。建物は、建築家・黒川紀章氏による設計で、市内を見渡す緑豊かな比治山公園に位置しています。自然の景観と調和しながら、美術館としての先駆性が表現されており、垂直軸に沿って下から順に自然石、タイル、アルミと変化する素材は、過去から未来への文明の発展や時間の流れを表し、設計者独自の「共生の思想」を体現しています。2023年3月18日にはリニューアルオープンしています。

詳細情報
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広島市現代美術館
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〒732-0815 広島市南区比治山公園1-1
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TEL: 082-264-1121 FAX: 082-264-1198
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