全国の市区町村別「放置空き家率増減MAP」公開:三大都市圏への人口集中と県庁所在地への集積が空き家問題を加速

分析結果の概要

この分析により、日本の空き家問題が「三大都市圏への人口集中」と「都道府県内での県庁所在地への集積」という二重の引力によって構造的に加速していることが示されました。

主な分析結果は以下の2点です。

  • 三大都市圏(南関東・近畿・東海)では、放置空き家率の上昇が全国平均の約3分の1以下に留まっています。

  • 47都道府県のうち42県(89%)で、県庁所在地の放置空き家率の上昇率が都道府県全体のそれを下回っています。

全国放置空き家率増減MAPの詳細

「全国放置空き家率増減MAP」は、2008年と2023年のデータを用いて、放置空き家率(放置空き家数 ÷ 住宅総数)の変化値を視覚的に示しています。赤色が濃いほど上昇が大きく、青色が濃いほど低下していることを意味します。

MAPを見ると、首都圏や大都市圏周辺は全体的に上昇が低い傾向にあり、地方部や山間部では赤色が濃く、上昇が大きいことが見て取れます。

この「全国放置空き家率増減MAP」は、以下のURLから利用できます。
https://www.crassone.jp/special/map-chart/index.html

放置空き家率マップチャート

分析結果の詳細

事象①:三大都市圏における上昇の抑制

11地域区分別に放置空き家率の上昇値を集計したところ、南関東(首都圏)が+0.59ポイントと最も低い水準を示しました。次いで近畿が+1.90ポイント、東海が+2.31ポイントと続きます。一方、四国は+6.49ポイントと最大の上昇を示し、南関東の約11倍に達しています。

11地域区分別 放置空き家率の変化

この傾向から、首都圏を中心とした三大都市圏への人口流入が継続している一方で、それ以外の地方圏では住宅の担い手が失われ、放置空き家が増加していると考えられます。特に四国は2008年時点でも空き家率が高く、その状況がさらに悪化している構造的な問題が指摘されています。

事象②:県庁所在地における上昇の抑制傾向

47都道府県すべてを対象に、都道府県全体の放置空き家率の変化と県庁所在地の変化を比較した結果、42県(89%)で「県庁所在地の上昇値が都道府県全体の上昇値を下回る」傾向が確認されました。

県内格差が特に顕著な都道府県

これは、都道府県内においても、県庁所在地や経済的な中心都市に人口や経済活動が集積し、それ以外の市区町村で空き家問題が深刻化している実態を示しています。この傾向は、四国・中国地方で特に顕著に見られます。

ただし、水戸、甲府、長野、津、奈良の5件では県庁所在地の放置空き家率上昇値が都道府県全体を上回る結果となりました。これらの都市には「県内に自分より大きな経済圏が存在する」という共通の特徴が見受けられます。例えば、奈良市は大阪・神戸への通勤圏内で市内居住需要が弱い、津市は名古屋経済圏の影響が強いといった状況です。

分析のまとめと今後の対策

二重の引力が地方空き家の要因に

今回の分析から、「三大都市圏への人口集中」と「県庁所在地(経済中心都市)への集積」という二つの引力が同時に働くことで、その双方から取り残された地域では放置空き家率の上昇が加速している構造が明らかになりました。特に四国・中国地方の地方都市は、三大都市圏からも遠く、都道府県内でも周辺部に位置するという「二重の不利」を抱えているため、空き家問題が深刻化していると考えられます。

住生活基本計画との接続

国が2026年3月27日に閣議決定した住生活基本計画では、「市場機能の進化を通じた住宅ストックの価値の最大限の活用」と「人生100年時代の住生活を支える基盤の再構築」がテーマとして掲げられています。今回の分析で明らかになった二重の引力構造を考慮に入れることで、この基本計画の掲げる「住宅ストックの最大限の活用」を、地域の実情に合わせてより実効性の高いものに進化させることが可能になると考えられます。

国・自治体・民間企業に求められる対策活動

  • :二重の引力構造に基づき、地域を類型化した上で支援策に濃淡をつけることが求められます。人口流入が見込める地域には空き家の利活用・移住促進策を重点的に投下し、引力から外れた地域では「活用」よりも「除却と集約」を主軸に据え、財政面から支援するのが有効と考えられます。

  • 自治体:県庁所在地は人口の受け皿としての役割を意識し、周辺市町村からの流入人口に向けた住環境整備を進めることが有効です。周辺部の市町村は、空き家の個別対処に留まらず、居住エリアの戦略的な集約を視野に入れた長期計画の策定が求められます。

  • 民間企業:空き家関連事業者にとっては、二重の引力の内側(県庁所在地周辺で上昇率が相対的に抑えられている地域)が利活用ビジネスの現実的な対象となります。引力の外側では解体・跡地活用などでのビジネスモデルを検討する余地があります。また、地方拠点整備やリモートワーク環境の充実を通じて「引力に抗う選択肢」を広げることも重要です。

全国空き家対策コンソーシアムの今後の活動

全国空き家対策コンソーシアムは、2025年11月に「自治体向け空き家対策の手引き」を公開しており、各自治体が実践的なステップで空き家対策を進められるよう支援しています。今回の分析結果を踏まえ、類型化された地域ごとに「空き家対策の手引き」をどのように活用すべきか、情報発信や対策支援をさらに強化していく予定です。

全国空き家対策コンソーシアム 概要

  • 名称: 全国空き家対策コンソーシアム

  • 代表理事: 株式会社クラッソーネ 代表取締役CEO 川口 哲平

  • 事務局: 株式会社クラッソーネ

  • URL: https://www.j-akiya.jp

  • 設立目的: 全国共通の課題である空き家の増加抑制、また空き家問題に向き合うESG経営の体現、CSR活動の推進