Netflix映画『THE RIBBON HERO リボンヒーロー』五十嵐祐貴監督と望月けい氏が語る制作秘話

Netflix映画『THE RIBBON HERO リボンヒーロー』制作の舞台裏

手塚治虫氏が描いた名作漫画『リボンの騎士』を原案とするNetflix映画『THE RIBBON HERO リボンヒーロー』は、そのティザービジュアル公開時にYahoo!トレンドで1位、X(旧Twitter)で国内トレンド3位にランクインするなど、大きな反響を呼びました。さらに、世界最大のアニメーション映画祭「アヌシー国際アニメーション映画祭2026」での公式上映とパネルディスカッションへの監督登壇も果たし、国内外から注目を集めています。

本作の監督を務めるのは、多才なアニメーターとして知られる五十嵐祐貴氏です。『呪術廻戦 第1期』のエンディング映像や、初監督作『スター・ウォーズ:ビジョンズ「のらうさロップと緋桜お蝶」』で高い評価を得ており、本作は氏にとって初の長編監督作品となります。

キャラクター原案は、『Fate/Grand Order』や『刀剣乱舞ONLINE』など、数々の人気キャラクターデザインを手がけてきた望月けい氏が担当。キャラクター原案協力には米山舞氏、アニメーションキャラクターデザインは新垣一成氏、アートディレクターはセドリック・エロール氏が名を連ねています。アニメーション制作は、監督の五十嵐氏が率いるOUTLINEが担当し、実力派クリエイター陣が集結して、過酷な運命に抗うヒーローの物語を繊細な世界観と洗練されたアクションで描き出します。

Netflixでの世界独占配信が始まった本作より、五十嵐祐貴監督のソロインタビューと、五十嵐祐貴監督と望月けい氏の対談インタビューの2本が公開されました。

アニメキャラクターの顔のクローズアップ画像です。前髪で一部が隠れた顔に、鮮やかな紫色の瞳が印象的で、どこか神秘的な雰囲気を醸し出しています。

五十嵐祐貴監督ソロインタビュー:「手塚治虫と新しい世代を繋げたかった」

五十嵐監督は、本作のオファーが『スター・ウォーズ:ビジョンズ』での手塚治虫氏へのオマージュ要素がきっかけだったと語っています。原作の『リボンの騎士』については、少女漫画であることから当初は距離を感じていたものの、改めて読むことで、宝塚歌劇団へのノスタルジーも感じる画期的な作品であると認識したそうです。令和の時代にどのようにアップデートするか悩んだ末、「手塚治虫という最重要作家と新しい世代を繋げる」という思いから、本作の制作を決意しました。

現代の『リボンの騎士』像を追求

最も大きな課題は「何を以って現代の『リボンの騎士』とするのか」という問いでした。脚本協力の香村純子氏ともこの点が繰り返し議論されたといいます。原作の主人公サファイアは男装の麗人として固定化した価値観を破壊する存在でしたが、現代においてその要素が同じように機能するとは限らないため、男装の麗人という設定をオミットし、大きな社会の中で現実と向き合いながら戦うヒーローの物語を目指しました。

物語の着想については、2020年のコロナ禍以降の「アンコントローラブルな世界で生きるために強大な力が必要」という現代社会の気分が反映されています。力のない若い世代がやる気を失う中で、辛い現実をどう生きるかという問いに、サファイアの物語が共感を得られるのではないかと語っています。手塚治虫氏も他の作品で社会的な気分を取り入れていたため、このアプローチは避けて通れないと感じたそうです。

サファイア役への思いと手塚作品へのオマージュ

サファイア役には、コメディアン的な才能を持つ人物を起用することが初期から決まっていました。笑いやエンタメが現実の停滞感を打開するコミュニケーション能力を持つ人間が、現代社会でヒーローとして求められているという考えからです。サーヤ(ラランド)さんの起用は声の印象が決め手となりましたが、独立事務所で活動されていることも「強大な力と戦う孤高のヒーロー」というサファイアのイメージに合致したといいます。サーヤさんの演技によって、サファイアの「怒り」「笑い」「繊細さ」が引き出されたと感じているそうです。

歯を見せて大きく笑うアニメキャラクターのクローズアップ。黒髪に紫のハイライトがあり、赤い服を着ています。強い感情を表現した表情が印象的です。

作品には手塚治虫作品へのオマージュが随所に散りばめられています。本作が手塚イズムを受け継ぎつつ新しいことをしている作品であることを示すため、手塚スピリットを埋め込むことは不可欠だと考えられました。視聴者がネタ元を調べて原典に触れる機会を作ることは、先人の仕事を新しい世代に引き継ぐ重要な仕事だと語っています。

白黒のシルエットで描かれた幻想的な画像。天使のような人物がパイプからハートを吹き出し、角を持つ悪魔のような小さなキャラクターがそれを受け取っている。愛や関係性を象徴するような寓話的な雰囲気を醸し出している。

視覚的なオマージュとしては、サファイアの故郷シルバーランドの城や兵士の造形・デザイン・色彩が原作から取り入れられています。城内の柱の上にある石像は無責任天使チンクの雰囲気で作られ、サファイアが白鳥に姿を変えるシーンも原作に由来します。サファイアを襲う獣のデザインは、『リボンの騎士』の続編『双子の騎士』に登場するヤマネコのような生き物と、手塚氏がよく描くオオカミをミックスしたものだそうです。

暗い背景に、角を持つ白い鳥のような幻想的な生き物が描かれています。体からは淡いピンク色の光の筋がたなびき、頭部からは輝く粒子が放たれており、神秘的で美しい雰囲気を醸し出しています。

壮麗な宮殿のような大広間が、破壊され廃墟と化した様子を上空から捉えたアニメーション画像。崩れた柱や散乱する瓦礫、特徴的な目の模様の天井画、そして床に立つ二つの小さな人物が印象的です。

暗い雨の森の中から、光る目と鋭い牙を剥き出しにした獰猛な獣(狼のような姿)が迫ってくる様子が描かれています。アニメーションスタイルの画像で、緊迫感と恐怖を感じさせます。

作品完成後の心境として、五十嵐監督は「手塚治虫という神を降ろす巫女のようなもの」と表現し、「次世代に手塚治虫をどう引き継ぐのか」が最大のミッションであったと述べています。自分色をできるだけ減らし、オリジナル要素の強い物語を作るという難易度の高い仕事を乗り越えられたことに安堵しているそうです。

ソロインタビューの全文はこちらで読むことができます。
https://www.theribbonhero.com/special/detail.html?id=423

五十嵐祐貴(監督)×望月けい(キャラクター原案)対談:新生サファイア誕生の秘話

対談インタビューでは、まず五十嵐監督が望月けい氏をキャラクター原案に起用した理由を語っています。原作の男装の麗人という要素を現代に合わせ、「可愛い」と「カッコいい」を併せ持つキャラクター像を表現できる人物として、望月氏に白羽の矢が立ちました。

望月氏は、名作ゆえにオファーを受けるか悩んだものの、五十嵐監督の手塚氏への深い知識とリスペクト、そして作品を次世代に継承する熱い思いに共感し、挑戦を決意したそうです。

キャラクターが生まれるまで

脚本開発とキャラクター開発はほぼ同時進行でした。五十嵐監督は望月氏に大まかなプロットを渡し、「自由に描いてください!」とオーダー。望月氏が手で考えるタイプであると感じていたため、自由に描いてもらうことで、そこから物語を探っていったといいます。望月氏も、題材が題材であるにもかかわらず自由に任されたことにプレッシャーを感じつつも、制作に挑みました。

サファイアのビジュアルを原作から変えるか否かは、本作における大きな岐路でした。望月氏は、歴史ある人気作品のキャラクターであるため悩んだものの、手塚氏が常に新しいものを作り続けてきた「人間とは何か」を突き詰めるスピリットにリスペクトを込め、自分だからこその新しいサファイアを描くことを決めたそうです。

新生サファイア誕生の秘話

最初に上がってきたのは、変身後のサファイアの姿でした。原作にあった帽子がなくなり、代わりに大きなリボンが描かれていることに五十嵐監督は驚きつつも、これこそが本作の核になると納得したといいます。そこから「リボン」が何を象徴するのかを考えながら脚本開発を進め、「可愛らしさ」だけでなく「カッコイイ」という現代的な意味合いも持たせることで、リボンの物語という土台が築き上げられました。

キャラクターデザイン画。短髪で黄色い目をしたキャラクターの4種類のデザイン案を示しています。線画と着色されたバージョンがあり、ケープを羽織り、一部のデザインでは青い編み込みの髪飾りを特徴としています。ファンタジー風の少年キャラクターのコンセプトアートです。

赤と黒の衣装を纏ったアニメ風少女のキャラクターデザイン画。全身イラストと、髪型や顔の表情、パーツの配置に関する詳細な設定や描画指示が多数含まれている。

望月氏は、変身後のサファイアのデザインに「解放」をイメージしたと語っています。自分を解放した姿であるならば、男装の象徴である帽子を押し付ける必要はないと考えました。サファイアの魅力は人間としての強さ、優しさ、芯の通った正義感にあり、性別に関わらず輝く存在であるため、それをリボンで表現しようと試みたそうです。手塚氏が漫画の中で大きなリボンをアイコニックに描くことが多かった点も踏まえ、リボンを大きく描き、それ以外は引き算で表現していきました。

色彩案についても議論され、最終的に解放をイメージする白をサファイアのキーカラーに据えました。対になる存在のベルベットは黒を基調とし、マントの裏地に赤を入れることでシルエットの美しさを活かしています。

3人の女性キャラクター「パイン」「サファイア」「ベルベット」の全身立ち絵と目のデザインが描かれた設定画。それぞれ異なる衣装と雰囲気を持つ。左は緑のコート、中央は赤と黒の派手な衣装、右はゴシック調の黒いドレスをまとっている。

予想を超える新たな作品へ

望月氏の描くキャラクターは線が多く、アニメーションとして表現する上で難しさがあったのではないかと尋ねると、五十嵐監督は、望月氏の絵をアニメで再現するには特殊なスキルが要求されると答えました。望月氏のデザインはプロポーションのバランスやシルエットの美しさを優先しており、「立体的正しさではなく、絵としての気持ち良さのバランス」を理解しながら動かすことが重要だったと語っています。

バトルシーンで赤いリボンが四方八方に飛び散る演出は、望月氏のデザインからインスパイアされたものです。望月氏も自身のデザインがカッコいい表現に繋がったことに喜びを感じ、アニメーターたちの苦労を思いつつも、自由にデザインを描けたことへの満足感を表明しています。

アニメスタイルの戦闘シーン。青みがかった深い谷底で、巨大な黒い物体と小さな人型キャラクターが対峙。赤いエネルギーと白い光が飛び交い、激しい戦いが繰り広げられている。

五十嵐監督は、表現に制限を付けなかったことで望月氏のセンスが最大限に活かされ、手塚氏と望月氏という絵柄の異なるクリエイターを掛け合わせた結果、予想を遥かに超える新しい作品が生まれたと語っています。望月氏も、配信後の反響に緊張しつつも、今の時代に作る意味のある作品になったことを願い、本作を愛してくれる人が一人でも多くいることを願っています。

対談インタビューの全文はこちらで読むことができます。
https://www.theribbonhero.com/special/detail.html?id=483

対談動画はツインエンジンYouTubeチャンネルで公開中です。
https://www.youtube.com/@TWINENGINE

作品情報

作品名

『THE RIBBON HERO リボンヒーロー』

イントロダクション

失われた王国の王女、サファイア。災厄”ネルガル”に故郷シルバーランドのすべてを奪われ、絶望の果てにゴールドランドへとたどり着きます。過去を抱えながらも、人々の優しさに触れ、ささやかな希望を見出し始めた彼女。しかし、平和な日常を嘲笑うかのように、再び災厄”ネルガル”が現れます。かつて故郷を灰燼に帰した絶望が、今また、この場所から光を奪おうとしています。もう、何も失わない。誰にも失わせない。悲しみの涙を振り払い、少女は剣を取ります。これは、リボンを結び、運命に抗うことを決めた、一人のヒーローの物語です。

キャスト

  • サファイア:サーヤ(ラランド)

  • パイン:小林星蘭

  • ベルベット:内山昂輝

  • ジルコ:新谷真弓

  • 教皇:壤 晴彦

  • ロック:細谷佳正

  • ヘケート:月ノ美兎

  • チョロギ:手塚祐介

  • チック:ルンルン

  • タック:でびでび・でびる

スタッフ

  • 監督:五十嵐祐貴

  • 原案:手塚治虫『リボンの騎士』より

  • 脚本協力:香村純子

  • キャラクター原案:望月けい

  • キャラクター原案協力:米山 舞

  • アニメーションキャラクターデザイン:新垣一成

  • アートディレクター:セドリック・エロール

  • ネルガルデザイン:okama

  • 美術監督:野村正信

  • 色彩設計:渡部夏美

  • CGディレクター:長嶺明音

  • 撮影監督:福田 光

  • 編集:植松淳一

  • 音楽:神前 暁(MONACA) 髙田龍一(MONACA)

  • 音響監督:三好慶一郎

  • 音響制作:東北新社

  • 製作:ツインエンジン

  • 制作:OUTLINE

主題歌

「Reborn」Girls Archives.

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