豪雨災害からの復興を支えた「猫城主」の奇跡の実話、児童書『猫城主になったさんじゅーろー』が発売

豪雨災害からの復興を支えた「猫城主」の奇跡の実話、児童書として登場

猫城主になったさんじゅーろー

豪雨災害で深い傷を負った城下町に、一匹の迷い猫が現れ、人々の心に温かい光を灯しました。この感動的な実話が、ノンフィクション児童書『猫城主になったさんじゅーろー』(著・西松宏)として、ハート出版から2026年7月28日に発売されます。本書は、岡山県高梁市にある備中松山城で全国的な人気を集める「猫城主」さんじゅーろーの物語を通じて、復興への道のりと希望を描き出します。

豪雨災害と「救世主」の登場

2018年7月、西日本豪雨は岡山県高梁市に甚大な被害をもたらしました。町は浸水し、市民生活は大きな打撃を受け、市のシンボルである国指定重要文化財・備中松山城も登城道の崩落により一時閉城を余儀なくされました。これにより観光客は激減し、地域経済にも深刻な影響が及びました。観光協会の職員や城の管理人は、復旧作業と観光再生に奔走する日々を送っていました。

そんな困難な状況の中、標高430メートルの山頂に建つ備中松山城に、一匹の茶白猫が姿を現しました。この猫は人をまったく恐れず、登城する人々に自ら近づき、足元にすり寄ったり、抱っこまでさせてくれる愛らしい存在でした。その姿は、災害で沈んでいた人々の心を少しずつ明るくしていきました。

やがてこの猫は、新選組隊士・谷三十郎にちなんで「さんじゅーろー」と名付けられます。これまで「天守を見る」ことが目的だった備中松山城は、「さんじゅーろーに会うために登る城」へとその魅力を変えていきました。SNSで写真が拡散され、新聞やテレビでも次々と紹介されるようになると、全国から猫好きや歴史ファンが訪れるようになり、災害後に落ち込んでいた来城者数はV字回復の道を歩み始めました。

猫城主になったさんじゅうろー

「人を笑顔にし、人を泣かせる猫」としての存在

著者である西松宏氏は、備中松山城に何度も足を運ぶ中で、さんじゅーろーが単なる人気猫ではないことを実感したといいます。亡くした愛猫を思い出しながら、さんじゅーろーを抱きしめて涙を流す人々の姿を目にし、「もう一度、あの子に会えたような気がしました」と語る来城者の言葉に触れました。さんじゅーろーは、人々を笑顔にするだけでなく、心に残る思い出まで呼び起こす存在として、多くの人に寄り添ってきたのです。

このため、本書は猫好きの方々だけでなく、家族への愛情、命の尊さ、人とのつながり、そして喪失を抱えながらも前へ進む力を描いた物語として、幅広い読者の心に響くでしょう。

苦しみの先に希望を見出すメッセージ

著者はあとがきで、さんじゅーろーの人生を「コインの表と裏」に例えています。家を飛び出したこと、豪雨災害、度重なる失踪騒動など、当時は苦しい出来事ばかりでした。しかし、それらの出来事があったからこそ、さんじゅーろーは猫城主となり、多くの人々を笑顔にし、高梁市の観光復興にも貢献する存在となったのです。

本書は、「つらく悲しい出来事の裏には、喜びや希望、チャンスがある」という普遍的なメッセージを、子どもたちにもわかりやすく伝えています。

新章を書き下ろした決定版

本書は、2019年に刊行されたフォトブックを基に、文章を活かしながら新たに第6章を書き下ろした新装版です。前作の刊行後、コロナ禍による来城者の減少、長年さんじゅーろーを支えた「じいや」の引退、新しいスタッフへの世代交代など、この7年間に起きた出来事が新たに収録されています。還暦を迎えたさんじゅーろーの「現在」までが描かれた、まさに決定版と言える一冊です。

雲海を眺めるさんじゅーろー

子どもから大人まで心に響く一冊

児童書として刊行される本書ですが、その読後感は世代を問いません。災害から立ち上がろうとした地域の人々の姿、命と向き合う家族の決断、偶然が積み重なって生まれた奇跡、そして逆境の中でも希望を見失わない人間の強さ。読む人それぞれが、自分自身の人生と重ね合わせることのできる内容となっています。

この本を読み終えた後には、標高430メートルの天空の山城を訪れ、城下町を吹き抜ける風を感じながら、猫城主・さんじゅーろーに会いたくなることでしょう。まさに「本の先にある体験」へと読者を誘う作品です。

猫城主になったさんじゅーろー 書籍カバー

本書は、西日本豪雨からの復興を支えた「猫城主」の実話、地域再生と観光復興を描くノンフィクション、命・家族・動物との絆を考える児童書として、防災教育、道徳、総合学習などにも活用できる一冊です。

書籍情報

著者について

西松宏(にしまつ ひろし)氏は、1966年生まれの児童書作家、写真家、フリーランスライターです。1995年の阪神淡路大震災を機にフリーランスとなり、雑誌やスポーツ紙、ウェブなどで幅広いジャンルを取材しています。「人と動物の絆を伝える」ことをライフワークテーマの一つとし、これまでに「犬のおまわりさんボギー ボクは、日本初の“警察広報犬”」、「猫のたま駅長 ローカル線を救った町の物語」、「備中松山城 猫城主さんじゅーろー」(いずれもハート出版刊)、「こまり顔の看板猫! ハチの物語」(集英社)などの児童書ノンフィクションを執筆しています。