フォトグラファーAKANE、『コマーシャル・フォト』2026年5月号で新感覚の静物写真を披露

「撮り尽くされた被写体」に新しい視点をもたらす

AKANEが今回向き合ったのは、物撮りにおいて身近でありながらも表現が難しい「グラス」です。彼女は「モノの記号を剥がし、新しいモノに生まれ変わらせたい」という自身の制作視点を軸に、誰も見たことのないようなグラスの表現に挑みました。

誌面では、グラスという普遍的なモチーフに対して10案以上のアイデアを検討し、その中からポップでかわいらしい「グラスで作ったチューリップの花畑」のような世界観を選び、撮影に落とし込んだ経緯が明かされています。チューリップやキャンディのように見える形の曖昧さを生かし、グラスという既成の認識を揺るがす発想は、AKANEの作品に共通する大きな特徴です。単に器としての美しさを見せるのではなく、見る人の解釈が広がるような“境界の揺らぎ”を画面の中に作り出しています。

カラフルなガラス製オブジェ

色、光、配置を精緻に設計し、静物に生命感を与える

誌面では、メインとなるチューリップ型のグラスを中心に、複数のグラスを組み合わせて構成を組み立てた過程も紹介されています。脚部を「茎」に見立てる工夫や、オレンジジュース、トマトジュース、グレープフルーツジュース、牛乳などを希釈しながら理想の色味へと調整したプロセスは、偶然性を受け入れつつも、画面を高い精度で設計するAKANEの姿勢を示しています。

単体カットでは、満たした液体にブロワーで空気を送り込み、花びらが揺れるような動きを加えるなど、静物でありながら生命を感じさせる表現にも挑戦しています。誌面は、完成したビジュアルだけでなく、その裏側にある試行錯誤まで含めて、AKANEの表現を多角的に伝えています。

グラスから滴るオレンジ色の液体

作家性と広告表現を往復しながら、独自のビジュアルを磨く

誌面の後半では、「カンパー乳」「ring forest」「jello tower」「fake fruits」といったパーソナルワークや、広告・ビジュアル制作の実例も紹介されています。異なるモノ同士を接続し、違和感を新しいイメージへと転換する手法は、作家活動と広告表現の双方で一貫しており、AKANEが自由な発想と撮影技術の両輪で独自のビジュアルを築いてきたことがうかがえます。

身近なモノを観察し、その記号性を一度解体した上で、別の意味を与えて再構築する。今回のグラス作品は、そうしたAKANEの制作姿勢が凝縮された一作であり、物撮り表現の可能性を改めて提示する内容となっています。

白い花瓶の上に置かれたパン

フォトグラファー プロフィール

長野県生まれで、小学校から高校までを香港と中国・深センで過ごしました。大学入学を機に渡米し、Columbus College of Art & Designを卒業後、アマナに入社。サードカルチャーキッドとしての経験を活かし、文化と歴史、あらゆる物をミックスしたエキセントリックで夢のような世界を得意としています。常識にとらわれない、わくわくするようなポップなビジュアルを強みとし、広告と作家活動の両面から独自の表現を追求しています。

書籍情報

  • 媒体名:コマーシャル・フォト 2026年5月号

  • 発売日:2026年4月15日

  • 発行元:株式会社玄光社

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