ホー・ルイ・アン氏の新作「The Price of Gold」
ホー・ルイ・アン氏は、現代美術、映画、パフォーマンス、理論といった複数の領域を横断して活動しており、これまでアジアの経済史、植民地主義、グローバル資本主義に関する物語を批判的に解釈し、イメージと権力の関係を探る作品を発表してきました。
今回の助成事業では、ホー氏が今後数年かけて制作予定の、東・東南アジアの主要な商業・金融ハブを起点に過去一世紀のグローバル経済史を再解釈するプロジェクトの一環として、日本を扱う章のリサーチを行いました。
このリサーチでは、商品としての「金」に焦点を当て、1897年の日本の金本位制導入を起点とする1890年代から1940年代にかけての日本の金融史を調査しました。東京、大阪、佐渡などを訪れ、文献調査に加え、歴史資料、アーカイブ映像、近代産業遺産の調査が実施されました。

また、同時期に発展した日本の無声映画にも注目し、金本位制に関連して政府が展開した公共キャンペーンや倹約啓発映画を通じて、文化芸術や視覚表現がどのように権力と結びつき、利用されてきたのかを検証。当時登場し始めた活弁士の役割にも光を当てた調査が進められています。

複数の地域を横断しながら行われるホー氏の実践は、歴史・金融・文化芸術が複雑に織りなすネットワークとして都市を捉え直し、その構造が現代都市とどのように深く接続しているのかを想像させる試みと言えるでしょう。

レクチャー・スクリーニング「The Price of Gold」開催概要
本リサーチの成果として、2026年4月4日(土)に日比谷図書文化館 日比谷コンベンションホール(大ホール)にて、レクチャー・スクリーニング「The Price of Gold」が開催されます。
各地で撮影された映像や収集されたアーカイブ資料、実存する映画作品をもとに、既存の歴史的物語が、ホー氏の視点によってどのように読み替えられ、語り直されるのか、ぜひご注目ください。

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タイトル: ホー・ルイ・アン「The Price of Gold」─ レクチャー・スクリーニング
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日時: 2026年4月4日(土) 15:00 ─ 17:00 (開場 14:30)※主催者挨拶およびポストトーク含む
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会場: 日比谷コンベンションホール(大ホール)
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入場料: 無料
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参加方法: 要予約。2026年3月上旬より、大林財団ウェブサイトにて事前予約の受付を開始する予定です。
また、記録冊子が2026年12月に完成予定です。
ホー・ルイ・アン(HO Rui An)氏 略歴
ホー・ルイ・アン氏は、現代美術、映画、パフォーマンス、理論の交錯点で活動するアーティスト兼ライターです。レクチャーやエッセイ、映画などを通して、グローバル時代のさまざまな統治システム下での労働、テクノロジー、資本の関係性を探求しています。
主な展覧会やプロジェクトには、「上海ビエンナーレ」(2023)、「バンコク・アート・ビエンナーレ」(2020)、「光州ビエンナーレ」(2018)、「ジャカルタ・ビエンナーレ」(2017)、「シャルジャ・ビエンナーレ13」(2017)、「コチ・ムジリス・ビエンナーレ」(2014)、ナショナル・ギャラリー・シンガポール(2022)、クンストハレ・ウィーン(2021)、山口情報芸術センター[YCAM](2018)、ハオス・デア・クルトゥーレン・デア・ヴェルト(ベルリン、2017)など多数があります。

推薦選考委員長コメント
《都市のヴィジョン─Obayashi Foundation Research Program》は、アーティストに都市のあり方を調査・研究・提案していただく機会を提供する助成事業です。第5回となる今回は、シンガポール出身のホー・ルイ・アン氏が助成対象者に選出されました。
ホー氏は、グローバル資本主義システムに対する批評的な視点に基づき、歴史資料や現代の文化的資料を幅広く調査し、東アジアおよび東南アジアにおける資本主義経済の成り立ちと現代の様相をレクチャー・パフォーマンスや映像の形式で発表する作品で知られています。「金(ゴールド)」を基軸に東アジアおよび東南アジア地域を展望し、歴史的な条件が現代の国家と市場メカニズムに与える影響を研究・考察するホー氏の視点は、「メタ市場」という都市を形づくる重要かつ見えない基盤を浮かび上がらせるものです。アーティストならではの物語によって、今回の研究が都市と現代社会にどのような光を当ててくれるのか、これまでの採択者のなかでもっとも若い世代のアーティストからの新鮮な提言に期待が寄せられています。
《都市のヴィジョン─Obayashi Foundation Research Program》について
この助成事業は、アーティストが「都市」をテーマに研究・考察する活動を支援する目的で、2年ごとに実施されています。2017年度にスタートし、今回で5回目を迎えました。豊かで自由な発想を持ち、都市のあり方に強い興味を持つ国内外のアーティストを対象としており、5人の推薦選考委員の推薦に基づいて決定されます。助成対象者には、従来の都市計画とは異なる独自の視点から、都市におけるさまざまな問題の研究・考察を行い、新しい、あるいは理想の都市のあり方を提案・提言していただきます。
アーティストの提案は、展覧会、トークイベント、パフォーマンスなど、その回に合わせたさまざまな形態で成果発表されるほか、記録冊子が発行されています。
過去の採択者について
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第1回(2017年度)会田誠
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展覧会「GROUND NO PLAN」
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第2回(2019年度)Theaster Gates(シアスター・ゲイツ)
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プレゼンテーション「To Be A Maker: Finding Afro-Mingei 作り手になること―アフロ民藝を求めて」
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記録集『ECONOMIES OF MINGEI』
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第3回(2021年度)exonemo(エキソニモ)
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記録集『Infected Cities』
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第4回(2023年度)イム・ミヌク
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展覧会「Hyper Yellow」
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パフォーマンス「S.O.S- 走れ神々」
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トークイベント
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記録集『Hyper Yellow』
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関連リンク
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大林財団ウェブサイト: https://www.obayashifoundation.org/
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《都市のヴィジョン─Obayashi Foundation Research Program》および過去実績について: https://www.obayashifoundation.org/urbanvision/



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