香川県丸亀市に滞在型ホテル「泊丸」が2026年9月開業 – アートとまちの余韻に浸る新たな港

瀬戸内の港街・丸亀に、旅の途中で静かに停泊するように滞在するホテル「泊丸」が開業

香川県丸亀市に、旅の途中で静かに停泊するように滞在するホテル「泊丸」が2026年9月に開業します。丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)からほど近い場所に位置し、全3室の小さな宿として、アートとまちの余韻に深く浸る滞在を提案しています。ホテル名の「泊丸」には、「泊まる」という宿本来の役割に立ち返り、丸亀での滞在をシンプルに届けたいという思いが込められています。

泊丸 ホテル外観

丸亀というまちと猪熊弦一郎現代美術館

丸亀は、城下町と港町の歴史を持ち、駅前には丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)が建つまちです。美術館を出ると、商店街や路地、古い建物、そこで生活する人々の日常が続いており、作品鑑賞とまち歩きが一体となった体験ができます。

MIMOCAには、画家・猪熊弦一郎(1902–1993)の作品と、彼が晩年に丸亀市へ寄贈した約2万点に及ぶ作品・資料が収蔵されています。猪熊は高松市に生まれ、旧制丸亀中学校で学びました。生涯にわたり色と形を探求し、その表現は美術館や公共空間を通して人々の暮らしの近くに置かれてきました。「泊丸」は、作品を見た後にその感覚をすぐに流さず、自分の中で往復する時間を大切にすることで、作品の印象を深め、まちの風景が少し違って見えるような変化が生まれる滞在を提供することを目指しています。

「泊まる」という滞在の哲学

旅や観光において、多くの目的地を巡ることに追われ、作品や風景から受け取ったものが心に残る前に通り過ぎてしまうことがあります。「泊丸」では、船が港に錨を下ろすように、旅の途中で一度荷物を置き、心と体を休めることから滞在が始まります。

MIMOCAで作品を鑑賞し、まちを歩いた後、宿へ戻ってその日に見た色や形、出会った風景を思い返す時間。そして、一晩の眠りを挟んで翌朝再び外に出たとき、前日と同じまちが、少し違った輪郭を持って現れる。このような「歩く、立ち止まる、戻る、眠る、朝を迎える」という一連の時間を「泊丸」は一つの旅として捉えています。身体を休めるだけでなく、作品やまちから受け取ったものを一晩かけて心に留め、その後の風景の見え方へとつなげていくための場所として、「泊丸」は美術館で終わらず、まちへ、宿へ、翌朝へと続いていく時間を創り出します。

「泊丸」という名称には、丸亀の「丸」、船の名に添えられる「丸」、そして「泊まる」という行為が重なり合っています。旅の途中で立ち止まり、受け取ったものを静かに往復するための、小さな停泊地でありたいという願いが込められています。

デザインとアートが彩る空間

ロゴデザイン

ロゴおよびその周辺設計は、大阪を拠点とするデザインスタジオ UMA / design farm(担当:原田祐馬氏、平川かな江氏)が担当しています。

制作されたロゴは、客室の名称にもなっている「〇(Maru)」「△(Sankaku)」「□(Shikaku)」をモチーフとしています。これらは猪熊弦一郎の作品にたびたび登場する基本的な形であり、その関係性やバランスから新たな美しさを見出してきた猪熊の表現に着想を得ています。ロゴではこれらの形を重ね合わせ、異なる個性を持つ客室を一つの宿として束ねるとともに、船を想起させる造形へと昇華させています。

各部屋の入口を彩る作品

各客室の入口部には、アーティストの平山昌尚氏(香川県高松市在住)による、ステンドグラスを思わせる小さな作品が設けられます。平山氏は育児を通じて娘の描く線や色から着想を得て制作を行っており、本プロジェクトでは、建物が受ける光や猪熊の色彩が宿の入口に在り続けることを、平山氏の色彩感覚で表現します。設置される作品は完成形を前提とせず、平山氏がこの宿に滞在し、作品を書き換えることが予定されています。宿泊者は、再訪の機会に宿の入口が少しずつ変化していることを感じられるでしょう。

丁寧な空間設計

設計は、株式会社ooc(ooc inc.、代表取締役:橋本卓磨氏)が担当しています。橋本氏はデザインオフィス nendoを経て2022年に株式会社oocを設立し、現在は東京と淡路島を拠点に、企画・設計・運営を自ら監修しながら、空間設計を軸とした表現活動を続けています。oocが培ってきた宿泊・滞在の場の運営実績を背景に、宿泊前から宿泊後までの人の所作や時間を丁寧に捉え、空間へと落とし込む設計によって、「泊丸」の滞在空間は形づくられています。

泊丸 客室インテリア1

泊丸 客室インテリア2

泊丸 客室インテリア3

地域に根差した運営

「泊丸」の企画・運営を行う株式会社丸亀企画は、丸亀で不動産業を営む馬場商事、全国各地で地域に根ざした事業を共同創業する株式会社NEWLOCAL、香川県内で飲食店の運営・プロデュースを手がけるVITAMIN、それぞれの知見を掛け合わせ、2025年に設立されました。NEWLOCALの宿泊・地域事業の知見と、馬場商事の不動産開発力、そして丸亀の人々や事業者とのつながりを生かしながら、地域に根ざした宿のあり方を模索してきました。クリエイティブディレクションは、丸亀出身でVITAMIN代表の林憲太郎氏が手掛けています。林氏が経営する「VITAMIN COFFEE」の名は、猪熊弦一郎の「アートはバイタミン」という言葉に着想を得ています。

丸亀企画が目指すのは、地域の魅力を外から付け加えるのではなく、このまちにすでにある人、文化、営みを起点に、新しい場や事業を生み出していくことです。「泊丸」もまた、丸亀で積み重ねられてきたものを受け取りながら、このまちを訪れる人と地域との新たな接点となる宿を目指しています。

株式会社丸亀企画 代表取締役 馬場健誠氏のメッセージ

株式会社丸亀企画 代表取締役の馬場健誠氏は、次のようにコメントしています。

「旅も人生も、ただ前へ進み続けるだけではなく、ときには立ち止まり、自分が見てきたものや感じたことを静かに振り返る時間が必要なのではないでしょうか。『泊丸』は、そんな時間を過ごすための宿です。丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で出会った作品や、丸亀のまちを歩いて感じた風景や余韻を、一晩かけて自分の中でゆっくりと往復する。そして翌朝、昨日とは少し違った景色を見ながら、新しい旅へ歩き出していく。この宿が、多くの人にとって『立ち止まること』が前へ進む力へと変わる、小さな停泊地になれば嬉しく思います。」

株式会社丸亀企画 代表取締役 馬場健誠氏

「泊丸」基本情報

  • 名称: 泊丸(tomaru/とまる)

  • 所在地: 香川県丸亀市本まち20-1

  • 客室: 3室(▢ 2F / △ 3F / ◯ 4F、各フロア1室)

  • 構造: RC造・地上4階・築 102 年(1924 年竣工)

  • 設計: 株式会社ooc(ooc inc.)/ 代表取締役 一級建築士 橋本卓磨

  • ロゴ・CI: UMA / design farm / 原田祐馬

  • 客室入口作品: HIMAA(平山昌尚)── 随時更新予定

  • 建築所在地区: JR予讃線 丸亀駅 徒歩3分

  • 開業予定: 2026 年 9 月 15 日

  • 公式サイト: https://tomaru-marugame.com

  • 公式Instagram: https://www.instagram.com/tomaru_marugame