AIを相棒に世界へ挑む「赤点博士」米村貴裕氏、ペーパークラフトソフト「ePaperCraft SHIRYU」をSteamで世界発売

20年以上の改良を重ねたペーパークラフトソフトが世界へ

「ePaperCraft SHIRYU」は、パソコン上で3D立体モデルを設計し、印刷用の展開図に変換するWindows用ソフトウェアです。収録されている70点以上のモデルをそのまま印刷して組み立てるだけでなく、ブロックを重ねるような感覚で独自の立体作品を制作することも可能です。

SHIRYU Professionalの画面とサーベルタイガーのペーパークラフト

完成した展開図を印刷し、切り、折り、貼り合わせることで、画面上のデジタルデータが手のひらの上の作品へと変わります。このソフトウェアの前身である「紙龍」は、第10回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門の審査委員会推薦作品に選ばれました。米村氏は推薦後も開発を止めることなく、20年以上にわたって改良を重ねており、現在も更新が続く現役のソフトです。

SHIRYU Professionalで犬のペーパークラフトを作成する様子

SHIRYU Professionalで地球儀のペーパークラフトを作成する様子

SHIRYU Professionalで鳳凰のようなモデルをデザインする様子

英語が苦手な博士がAIと共に米国出版を実現

長年SF小説やマンガ原作を執筆してきた米村氏は、英語で赤点を取った経験があるにもかかわらず、生成AIを参謀として海外企業への提案文を作成しました。米国の出版社eigoMANGAへの交渉を重ね、SFマンガ『Beast Code』と『Recycled Brain』の米国版を刊行しています。

eigoMANGAのイベントブースに並べられた漫画

『Recycled Brain』の米国出版はAnime News Networkが報じ、『Beast Code』についてはArab News Japanが米村氏本人へのインタビューを掲載しました。海外拠点や大企業の支援がない一個人が、AIを相棒とすることで国際的なメディアに到達した事例です。

SFマンガ「RECYCLED BRAIN」のプロモーション画像

AIの限界を探る研究と愛犬の声をAIで歌に

米村氏は、生成AIの実力と限界を実験で測る研究をライフワークとしています。AIに難題を出し続け、どこでどのようにAIが崩れるのかを観察するこの研究は、米村氏自身が「AIのポンコツさを引き出す趣味」と呼ぶものです。その成果は日本の学術誌でも報告されています。

この探究は音楽分野にも及びました。米村氏は「A-Rumenoy」名義で、愛犬であるスコティッシュ・テリアの鳴き声や遠吠えをAIに学習させ、犬自身の声をもとにした歌声を制作しました。AIを徹底的に使い込む研究者が、そのAIを用いて愛犬に新しい表現を与えるという、技術による新たな創造の可能性を示しています。

VALLEXとLivePortraitを使った犬の音声合成・モーション技術を示す画像

SF小説を紙媒体で刊行、デジタルと紙の両面で発信

2026年夏、米村氏はSF小説『知的生命メカニズム』を銀河企画から紙の本として刊行します。前編『アダムの楽園・本能なき理性の帝国』(ISBN 978-4-909793-32-4)と後編『イブの祈り・心ある獣たちの未来』(ISBN 978-4-909793-33-1)の2冊です。

図書館で展示されている米村貴裕氏の書籍

知性とは何か、理性と本能はどう違うのかといった問いを、ドラゴン型の合成生命と人間を軸に物語に落とし込みました。日本の紙文化である折り紙や紙工作をデジタルで再構築した「紙龍」をSteamで世界に届け、同時にAIを巡る物語を紙の本で刊行することで、米村氏はデジタルと紙の両面から日本発の表現を世界へ発信しています。

米村貴裕氏からのコメント

米村氏は、「正直、AIに『嫉妬』しています。カップ麺ができるより早く、ときに自分よりうまく作ってしまうからです。でも嫉妬しているからこそ、限界もわかります。だから割り切って、別ジャンルの相棒にしました」と語ります。

「作品の中身は自分の手で守って、世界へ出る力はAIに借りる。これで英語赤点だった私が海外企業と交渉できるようになり、ものづくりが世界規模で楽しくなりました。私にあるのは零細企業とへっぽこ相棒のAIだけです。海外拠点もありません。それでも100メートル走ではなくマラソン方式で作り続け、何度でも挑戦すれば、世界へつながる道は拓けます。AIに嫉妬しながら研究し、相棒にして世界へ出た。全く同じことをしているマッドサイエンティストは、世界に何百人もいないことを祈っています」と、AIとのユニークな協働について述べています。

米村貴裕氏について

企画展コーナーで本を持つ米村貴裕氏

米村貴裕氏は博士(工学)の学位を持ち、商業作家、ソフトウェア技術者として有限会社イナズマの代表取締役を務めています。2001年に起業し、2006年には開発ソフト「紙龍」が第10回文化庁メディア芸術祭で審査委員会推薦作品に選出されました。立体作図技術で特許を出願(特開2006-309363)した実績もあります。

専門学校や大学で非常勤講師も務め、プログラミングや数理の分野で次世代の技術者育成にも携わっています。大阪を拠点に、ソフトウェア開発、AI研究、マンガ、小説、教育、音楽制作に取り組み、国内で制作したコンテンツを自ら海外企業へ提案し、米国での商業出版、Steamでの世界販売、音楽の国際配信を達成してきました。生成AIの限界を探る研究をライフワークとし、その業績は国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が運営する研究者総覧researchmapで公開されています。本件に関するお問い合わせは、有限会社イナズマのinfo@inazuma7.co.jpまでご連絡ください。