真珠産業にAIの鑑識眼を導入:ARCRAがDX推進で選別時間を半減へ

伝統産業が直面する「技術継承」の課題にAIで挑む

愛媛県の真珠産業は国内トップクラスの生産量を誇りますが、後継者不足や職人の高齢化という課題に直面しています。真珠の品質評価は長年の経験に基づく「職人の鑑識眼」に大きく依存しており、一人前の職人を育成するには膨大な時間が必要です。

ARCRAは、この属人化していた「職人の目」をAI画像解析技術によって定量化し、デジタル化することで、技術継承の促進、生産現場の負担軽減、そして産地全体の競争力強化を目指しています。

本年度プロジェクトの3つのポイント

本年度のプロジェクトでは、以下の3つのポイントに重点を置いています。

  1. 「現場で使えるAI」への進化
    昨年度の検証成功を受け、養殖・加工を行う県内4事業者の現場にシステムを導入します。初期設定から運用フローまでを現場に最適化し、即戦力となるシステムの構築を進めます。

  2. 圧倒的な効率化:選別時間を「半分」に
    これまで人手に頼っていた粗選別工程において、「作業時間50%削減」を具体的な数値目標として掲げます。AIが高速かつ均質に1次選別を行うことで、人間はより高度な最終検品に集中できる体制を構築します。

  3. 「初期商品版」としてのビジネスモデル確立
    実証を通じて、継続利用の意向や価格妥当性を検証します。これにより、将来的に真珠業界全体へ横展開可能な「パッケージ製品」としての完成度を高めていきます。

昨年度の成果:6つの複雑な評価基準をクリア

令和7年度の取り組みでは、専用の撮影筐体とAIを組み合わせることで、「大きさ」「形」「テリ」「巻き」「色味」「キズ」という真珠特有の複雑な6指標の高精度判定に成功しました。これにより、「AIには不可能」とされてきた職人の鑑識眼のデジタル化に道筋がつけられました。

真珠の検査装置

検査装置を操作する作業員

今後の展望

今回の継続採択を受け、ARCRAは技術検証の高度化、専用機構の改良、現場導入体制の構築を推進するとともに、地域産業やパートナー企業との連携を一層強化していく方針です。また、本プロジェクトを契機として、宝飾品、農水産物、精密部品、化粧品、繊維製品など、他業種の品質保証分野への応用も視野に入れた技術展開を進めます。これらの取り組みにより、製品評価の信頼性向上、プロセスの標準化、工数削減、競争力強化といった多面的なソリューションの提供を目指します。

担当者のコメント

株式会社ARCRA担当者

ARCRAの担当者は、「昨年度の取り組みが評価され、本年度も継続採択されたことを大変光栄に思います。私たちは、どんなに優れたAI技術も、現場で価値を生まなければ意味がないと考えています。愛媛の伝統が築いてきた『職人の感性』を、次世代に繋ぐための『技術』へと昇華させ、地域経済の活性化に貢献してまいります。」とコメントしました。

また、本プロジェクトは、システムエルエスアイ株式会社、愛媛県産業技術研究所という開発パートナーとの協力によって実現していること、そして愛媛県庁や長年にわたり真珠産業を支えてきた職人の方々をはじめ、多くの地域の支援に感謝の意を表し、成果として恩返しができるよう努めていくと述べました。

トライアングルエヒメについて

トライアングルエヒメロゴ

「トライアングルエヒメ」は、愛媛県が令和4年度から推進している事業です。令和7年度からは「トライアングルエヒメ2.0」として、デジタル技術を県内各産業への現場実装・定着・横展開により、県内産業の稼ぐ力の強化や現場でデジタルを使いこなす人材の育成、さらには全国共創拠点との連携による地域課題の解決やデジタル企業の県内誘致、実装成果のマッチングにより新たな稼ぐ力の創出につなげることを目指しています。

事業の詳細については、以下のウェブサイトをご覧ください。

関係事業者について

システムエルエスアイ株式会社
所在地:愛媛県松山市南斎院町686番地3
HP:https://www.syslsi.com/index.html

愛媛県産業技術研究所
所在地:愛媛県松山市久米窪田町487−2
HP:https://www.pref.ehime.jp/page/9337.html

株式会社ARCRA
ARCRAロゴ
所在地:東京都文京区本郷6-25-14
代表取締役:藤本 秦平
問い合わせ先:contact@arcra.jp
HP:https://arcra.jp

株式会社ARCRAは、東京大学 松尾研発スタートアップ®として、画像認識、自然言語処理、エージェントAI、AI活用コンサルティングに強みを持つソフトウェア開発企業です。

「松尾研発スタートアップ」とは、松尾研出身者が創業または松尾研の支援を受け創業された企業の内、技術・事業力共に成長可能性が認められ、且つ松尾研の理念に共感し共に後進の育成に取り組む、選抜されたスタートアップ企業群を指します。(商願2020-135191、商願2022-145945)