福井県坂井市三国湊、「食のアトリエ」と「マーラータン」で描く新たなまちづくり

福井県坂井市三国湊、「食のアトリエ」と「マーラータン」で描く新たなまちづくり

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福井県坂井市の風情ある三国湊では、地域活性化を目指す「三国湊共創プロジェクト研究」が最終報告を迎えました。昨年8月から約20回の講義とワークショップを経て、12名の研究員が創意工夫を凝らしたまちづくり活性化策を発表。江戸時代に北前船の寄港地として栄え、今もなおその面影を残す三国湊ですが、少子高齢化による空き家増加といった課題に直面しています。本プロジェクトは、坂井市、NTT西日本、事業構想大学院大学の三者連携により、地域の未来を拓く人材育成と具体的な事業構想の創出を目的として実施されました。

個性豊かな12のまちづくり策

最終発表会では、古民家を活用した食の拠点、えちぜん鉄道でのBAR構想、健康と美食をテーマにした新たな食文化の提案など、多岐にわたるアイデアが披露されました。その中でも、すでに具体的な事業として動き出している2つの構想に焦点を当ててご紹介します。

食を通じて人と地域をつなぐ「オテシオ」

フードディレクターの倉橋藍さんは、「古民家を舞台に、食でつなぐ人と地域」をテーマに、三国湊の空き家を改装した“食のアトリエ”「オテシオ」の構想を発表しました。このアトリエでは、ランチ営業や料理教室に加えて、30~60代の女性や子育て世代、生産者、観光客などが「語らい」「企画会議」「ワークショップ」を行う交流の場を目指します。

笑顔の女性がタブレットを手に持ち、画面には色とりどりの小さな料理が並んでいます。

倉橋さんの構想の背景には、福井に移住して調理師免許を取得し、食を通じて様々な活動を行ってきた経験があります。オテシオという名前には、「手塩にかける」という丁寧なものづくりへの思いと、「おてしょう(手塩皿)」のように身近で愛おしい存在でありたいという願いが込められています。食事だけでなく、「つくること」「知ること」「語ること」を大切にし、福井の旬の味覚を活かした料理を提供することを目指しています。

揚げた鶏肉と新鮮なサラダがメインの定食。ご飯、スープ、複数の副菜が添えられ、バランスの取れた和食の食事がトレイに並べられています。

三国湊を選んだ理由について、倉橋さんは、夫が三国出身であることに加え、三国祭のような大きな祭りがありながらも、「まちに余白がある」と感じる独特の魅力と色気に惹かれたと語っています。また、北部丘陵地や三里浜といった豊かな食材の宝庫であることも、この地での事業展開を後押ししています。

明るい雰囲気のレストランまたはカフェで、二人の女性が笑顔でポーズをとっています。

まちづくりには、地元の人々が「ここがおすすめだよ」「おれはここから見る夕日が一番きれいだと思う」といった主観的な「生きた情報」を伝えることが重要であると倉橋さんは考えています。訪れる人が地元の人との出会いを通じて、より深くまちを好きになるきっかけが生まれるでしょう。

健康と美食を融合する「三国湊マーラータン」

頂マーラータン・おうちでマーラータン株式会社取締役COOの二瓶寛史さんは、「健康と美食のまち坂井市に、マーラータンという新しい発信を。」と題し、全国的にブームとなっている中国・四川省生まれの春雨煮込みスープ「マーラータン(麻辣湯)」を三国湊の新名物として展開する構想を発表しました。坂井市が「健康づくり宣言」を行い、美食都市アワードにも選ばれていることから、マーラータンを単なる飲食店としてではなく、地域活性化に結びつく新しい日本の食文化として根付かせたいと考えています。

笑顔の男性が「三国湊マーラータン」のポスターの前で宣伝しています。

二瓶さんは、自治体と連携して地域の魅力と共にブランドを育てることを目指し、坂井市の共創プロジェクトに参加しました。マーラータンは健康によく医食同源の食べ物であり、体を温める効果があることから、寒い時期の長い北陸の食文化に合致すると言います。また、福井の豊かな食材と「出汁文化」は、和出汁にこだわった和製マーラータンと高い親和性があると感じています。

木製のテーブルに置かれた、卵、エビ、ミニトマト、野菜が盛り付けられた温かいスープ料理です。

すでに、えちぜん鉄道三国駅のカフェ「はぁとの葉っぱ」で「三國湊マーラータン」の試験販売を開始しており、その売上の一部は地元の三国高等学校へ寄付されています。二瓶さんは、構想だけで終わらせず、実際に地域で事業を動かすことの重要性を強調しています。

木製カウンターに座る女性が、別の人物から箸が添えられた小さな白い器を受け取っている様子です。

二瓶さんは、三国湊が持つ北前船交易の歴史、港町の景観、地域に根ざした食文化、そして地形が育む食と文化の構造に大きな魅力を感じています。これらの要素を再編集し、一体的なブランドとして確立できれば、ガストロノミーツーリズムの観光地として大きく発展する可能性を秘めていると語っています。北陸新幹線の福井開業や関西圏からのアクセス強化も、今後の注目度を高める要因となるでしょう。

三国湊の未来を彩る「共創」の力

三国湊共創プロジェクト研究から生まれたこれらの多様なアイデアは、地域の未来を明るく照らす光となるでしょう。食文化の創出から地域交流の拠点づくりまで、それぞれの夢が三国湊の魅力をさらに引き出し、新たな活気を生み出すことが期待されます。