観光PRではない、参加者のまなざしをそのまま綴った一冊
『ナガノグラフィ』は、いわゆる県内の魅力を紹介する観光冊子とは一線を画しています。参加者一人ひとりの言葉や写真、短歌をあえて編集しすぎることなくそのまま収録し、「なぜこの表現になったのか」「なぜこの風景を撮ったのか」を読む人自身が考える構成を採用しています。情報を届けるのではなく、長野に対する多様な視点を手渡すことを目的とした一冊です。

Local Knotは、「地域の結び目になる」ことを理念に掲げています。後継者不足の宿泊施設を事業承継し、「ジャーナリングするゲストハウス」として再定義された「Local Knot Backpackers」は、宿泊の場にとどまらず、記憶や感情を言葉にする場へと刷新されています。
2025年4月からは「わたしとナガノ」をテーマに毎月ワークショップが開催され、住む人、旅で訪れる人、移り住んだ人など、多様な立場の人々が長野についてそれぞれの視点で感じたことを言葉や写真で表現してきました。これらを束ねて制作されたのが、本ZINE『ナガノグラフィ – Naganography』です。
“Graphy”はギリシャ語のgraphēに由来し、「書くこと」「描くこと」「記録すること」を意味します。Photographyが「光で描くこと」、Biographyが「人生を記録すること」であるように、Naganographyは、今この瞬間の長野を、暮らす人・旅する人・移り住む人それぞれの視点で切り取り、描き、記録する試みです。善光寺やそばといった“よく知られた長野”から一歩外れ、日常の景色や個人の記憶に目を向けることで、観光地としての長野ではなく、「誰かの体験としての長野」に触れる機会を提供します。
6ヶ月間、長野を観察するプロジェクト
「ナガノグラフィ」プロジェクトは6ヶ月間、月に1回開催されました。設定されたテーマの例としては、「わたしとナガノ」「旅人とナガノ」「文学とナガノ」「街並みとナガノ」などがあります。参加者はまちを歩き、対話を重ね、それぞれの視点から長野を見つめ直しました。
本ZINEでは、あえて解説を加えすぎていません。断片的な言葉、静かな写真、余白を残したページ構成が特徴です。この“余白”こそが本冊子の思想を表しており、「これはどんな気持ちから生まれたのだろう」「この短歌の背景にはどんな時間があったのだろう」といった問いを読者に手渡します。

変わりゆく長野を記録する意味
収録された写真の中には、すでに廃業してしまった店舗や姿を変えた風景も含まれています。まちは常に更新されていくため、その瞬間にしか存在しなかった視点を残すことに意味があると考えられています。このZINEは観光PRでも移住促進冊子でもなく、一人ひとりが目にした“いまの長野”の断片を綴った、時間の記録です。
Local Knotは、地域と観光客を単につなぐだけでなく、「関わり方」をつくる存在でありたいと考えています。本ZINEの印刷は、長野県内の藤原印刷株式会社の協力により制作されました。
長野県立図書館での展示と「ZINE Fes」出店
本ZINEは、長野県立図書館での展示が決定しています。公共空間で手に取られることで、長野という土地を“情報”ではなく“まなざし”から見つめ直す機会が広がることが期待されます。
また、2026年3月20日(金)には、長野市で開催される「ZINE Fes」への出店も予定されています。当日はZINEの販売に加え、制作背景や思想についても直接伝えられる機会となり、地域の方、観光事業者、表現活動に関心のある方との新たな接点創出を目指します。



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