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麗澤大学主催「茨城フォーラム2026」開催報告:地方のエネルギーマネジメントと社会実装の課題を産官学で議論

開会挨拶と趣旨説明

開会にあたり、麗澤大学の徳永澄憲学長が挨拶を行いました。徳永学長は、麗澤大学が土浦市をはじめとする常磐線沿線地域と深い関わりを持つことに触れ、地域のモビリティというローカルな課題と脱炭素というグローバルなテーマを併せて議論する本フォーラムの意義を強調しました。グローカル人材の育成や文理融合教育を進める麗澤大学として、産官学連携を通じて地域貢献していきたいとの考えが示されました。

続く趣旨説明では、内閣府SIP第3期「スマートエネルギーマネジメントシステムの構築」の研究開発代表者である東北大学の安東弘泰教授が登壇しました。安東教授は、「内閣府SIP第3期『スマートエネルギーマネジメントシステムの構築』の取り組みを、より広く展開する際に何が障壁となるのか。現場の皆様と率直に議論したい」と呼びかけました。

戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の概要

安東教授は、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の仕組みについて次のポイントを挙げました。総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)がSociety 5.0の実現に向け、社会的課題を設定し、プログラムディレクター(PD)や予算配分をトップダウンで決定すること。基礎研究から社会実装までを見据えた一気通貫の研究開発を推進すること。そして、府省連携が不可欠な分野横断の取り組みを、産学官連携で進めることなどが示されました。さらに、マッチングファンド等による民間企業の貢献、技術だけでなく事業・制度・社会受容性・人材の視点からの実装促進、スタートアップ参画の後押しなど、社会実装を前提とした枠組みであることが強調されました。

また、安東教授は、理論研究(数理工学・AI)を基盤に、次世代モビリティを含むデータ活用を通じてスマートエネルギー、スマートシティへ展開する研究の方向性を紹介しました。地方部では小規模な分散型太陽光発電が各地に広がる一方で、余剰電力の活用や系統制約、交通空白といった課題が重なり合う現実を踏まえ、「理想と現実の差を認識し、持続可能性を含めて議論することが重要」と述べられました。

地域課題を“届ける”ための視点:研究発表

研究発表では、各地域の実践事例を通じて、現場感と社会実装に向けた論点が共有されました。

  • 一般社団法人スマートシティ社会実装コンソーシアム 運営委員 前田奨一氏
    レジリエンス分科会の報告として「地域にどう届けるか」という視点を軸に、インフラ老朽化、人流データの活用、ウォーカブルプロジェクト、地域課題とスマートモビリティを掛け合わせた取り組みが紹介されました。技術単独での導入ではなく、複数の課題を組み合わせることで、実装への道筋が見えてくる可能性が示されました。

  • 北海道天塩町企画商工課 菅原英人氏
    ドライバーの高齢化や人口減少により公共インフラの維持が困難になる中、ICTを活用してマイカーの空席を「見える化」し、その仕組みを基盤とした相乗りプラットフォームを構築した事例が報告されました。高齢者にも利用しやすいよう電話相談窓口を設けたことで利用が伸びた点に加え、少数ドライバーによる運用体制、インセンティブの維持、責任の整理、デジタルデバイドといった課題についても言及されました。さらに、風力発電のポテンシャルが高い地域特性を踏まえ、地域内での電力確保とモビリティを結びつける可能性についても示されました。

  • 長崎県平戸市財務部企画課 地域振興班長 植野健治氏
    過疎地域における移動手段の再設計において「研究知見と住民意識の接点」が鍵になると指摘されました。都市部を前提としたMaaSやAIオンデマンドの仕組み(スマートフォン操作やキャッシュレス決済など)が、要支援に近い住民が増える現実と必ずしも一致しないことを踏まえ、互助の仕組みに“混ぜていく”視点や、いきなり最終形を目指さず中間解を設計する重要性が強調されました。

  • 熊本県商工労働部産業振興局 エネルギー政策課長 吉澤和宏氏
    阿蘇地域におけるメガソーラーの立地問題や、県が推進する「くまもとゼロカーボン行動ブック」を例に挙げながら、再生可能エネルギー導入と景観・防災・地域受容を両立させる難しさが紹介されました。再エネ導入の進展とともに顕在化する出力制御(抑制)の課題に触れつつ、昼間の余剰電力を最大限活用するための系統整備や水素等による貯蔵活用、そして「促進」と併せた「抑制」の見える化の必要性が提起されました。

  • つちうらMaaS推進協議会 関東鉄道株式会社 関連事業部長 矢野友亮氏
    AIデマンドバスやグリーンスローモビリティの実証を重ねる中で、運転手不足という危機的状況を踏まえ、「アプリを作ることがゴールではない」と強調されました。その上で、産官学連携による交通データ解析を進め、勘や経験に頼らないエビデンスベースの交通再構築を目指すとともに、乗り換え等で生じる分断をデジタルでつなぐMaaSの役割が整理されました。

北海道の地図と地域開発に関するプレゼンテーションの様子

パネルディスカッション:実証から実装へ――“ギャップ”と“継続性”

パネルディスカッションには、地元茨城の企業として関彰商事株式会社および筑波銀行、アカデミアから東北大学と慶應義塾大学、産業界からWILLER株式会社、東急建設株式会社の計6名がパネラーとして参画しました。実証から実装へと移行する過程で生じる課題や、その継続性をいかに確保するかについて、立場の異なる視点から意見が交わされました。

民間企業からは、補助金依存からの脱却、利用頻度や単価、運行の簡素化といった事業性の課題が示され、金融機関からは「実証の次をどう描くのか」という出口戦略や、実証と現場ニーズとの間にあるギャップが共有されました。WILLER株式会社の箱田氏は、警察等との調整を含め、「まずはやってみないと分からない」という実装段階ならではのリアルな課題を紹介しました。一方、東急建設株式会社の伊藤氏からは、バイオマス導入において直面する立地調整や地域受容(NIMBY)の壁が語られ、地域の理解醸成が重要な論点として浮かび上がりました。

また、筑波銀行の渡辺氏は、茨城県内での豊富な地域連携の経験を踏まえ、実証実験におけるエリア設定の難しさや、自治体・企業・住民を巻き込む調整の重要性について説明しました。東北大学の安東教授は、理論が成立するための「簡略化」と現場適用における障壁の間にある矛盾に触れ、現場の声を取り込みながら、持続可能性を理論に組み込んでいく必要性を強調しました。

【パネリスト】

  • 関彰商事株式会社 執行役員 総合企画部長 上村 祐一 氏

  • 筑波銀行 営業副本部長 渡辺 一洋 氏

  • 東北大学 教授 安東 弘泰 氏

  • 慶應義塾大学 教授 粟野 盛光 氏

  • WILLER株式会社 社長室 マネージャー 箱田 大輔 氏

  • 東急建設株式会社 土木事業本部 新事業開発部 次長 伊藤 誠 氏

エネルギーマネジメントに関するパネルディスカッションの様子

閉会のコメントと今後の展望

フォーラムの最後には、茨城県都市計画審議会会長の中川喜久治氏よりコメントが寄せられました。天塩町や平戸市といった課題先進地での取り組みや、SIPを通じたアカデミア連携の意義に触れ、本フォーラムは、今後の茨城県のまちづくりや地域政策を考える上で大変示唆に富む内容であったと総括されました。

本フォーラムは、エネルギーとモビリティという個別テーマを超え、人口減少、交通空白、災害対応、地域受容といった複合的な課題を前に、産官学が共通の危機感を共有しながら、「地域にとって意味があり、明日も続く仕組み」をどう形にしていくかを問い直す機会となりました。麗澤大学としても、研究成果の社会実装を支える学術的知見の提供に加え、地域と共に学び、実装人材を育む拠点として、今後も議論と連携を一層深めていくとのことです。

講義室で多くの聴衆が講演を聴いている様子

麗澤大学WEBサイトはこちら:
https://www.reitaku-u.ac.jp/

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