小豆島の一棟貸し宿「お屋敷ステイ 幸」 醤油の重石が語りかける歴史と文化の宿

醤油づくりの記憶を刻む「重石」の列

「お屋敷ステイ 幸」の玄関アプローチには、大小さまざまな重石が整然と並べられています。これらは、蔵で醤油を搾る際に圧力をかけるために使われていたもので、かつての家業を支えた「働く道具」が、今では客人をもてなす「しつらえ」としての役割を担っています。重石の表面に見られる欠けや丸み、その独特の質感は、仕込みと搾りを繰り返してきた長い年月の重みを静かに伝えています。

宿の再生にあたり、重石の撤去も検討されましたが、「ここを歩くたびに、昔の仕事や家の歴史を感じてほしい」という思いから、そのまま残すことが選択されました。この決断は、単なる遺構の保存に留まらず、歴史を肌で感じる宿泊体験の創出へと繋がっています。

伝統的な日本家屋と重石が並ぶ庭園

宿泊体験の一部として残された「風景そのもの」

玄関アプローチは、宿泊客が宿に到着して最初に足を踏み入れる場所であり、「非日常」への入り口となる大切な空間です。車を降りて荷物を手に、重石の横を一歩ずつ進む時間は、単なる通路を歩く行為ではなく、「この家が歩んできた時間の上を歩く体験」として丁寧に設計されています。

夜には、足元のライトに照らされた重石が幻想的に浮かび上がり、昼間とは異なる趣深い表情を見せます。かつては働く道具として活躍した石たちが、今では家族旅行や2・3世帯での滞在を静かに見守る存在として、そこに佇んでいます。

夕暮れ時にライトアップされた日本家屋と庭園

古いものを「飾り」にしない再生のあり方

「お屋敷ステイ 幸」の再生においては、「古いものを“なんとなく残す”のではなく、意味を持ったまま使い続ける」という哲学が大切にされています。重石を玄関アプローチに配置したのも、単なる装飾ではなく、醤油づくりの歴史や、元のオーナーが守り続けてきた家業への誇りを感じられる場にしたいという明確な意図があるからです。

宿では、重石の役割や、かつてこの家で行われていた醤油づくりの物語も紹介されており、宿泊客は「ただ泊まる」だけでなく「土地の背景を知る」貴重な機会を得ることができます。こうした“小さな物語”の積み重ねが、小豆島ならではの豊かな滞在価値を高めています。

手入れされた日本庭園の風景

「お屋敷ステイ 幸」の概要

  • 公式サイト: https://oyashiki-stay.com

  • 収容人数: 定員9名(客室4室、リビング、ダイニングキッチン)

  • 設備: 半露天風呂、サウナ、蔵BAR、月見台、日本庭園、自家菜園

  • 料金目安: 平日2名 77,100円〜(税込、3名以上1名ごと15,000円追加)

  • 住所: 香川県小豆郡小豆島町苗羽甲1476

小豆島リトリーツ株式会社は、古民家一棟貸し宿の運営や、地域資源を活用した体験プログラムの造成・販売を通じて、小豆島の美しい自然と豊かな歴史をより多くの人々に伝えることに取り組んでいます。特別な滞在と島の魅力に触れる機会を提供し、地域活性化にも貢献しています。