データ分析視点から見た4つのトレンド(湯通堂圭祐氏)
1. 考察前提作品の増加
2025年には、『いいこと悪いこと(テレビドラマ)』や『タコピーの原罪』のように、視聴者がSNS上で考察を深めることで話題が広がり、視聴維持率が高まる作品が増加しました。データによると、これらの作品は他を大きく上回る維持率を示しています。2026年には、ユーザーを巻き込み、発信を促すような考察要素の強い作品がさらに増えることでしょう。
2. 90年代〜2000年代アニメのリメイク増加
2025年には、『地獄先生ぬ〜べ〜』『キャッツ♥アイ』『YAIBA』といった、90年代から2000年代にかけての人気作品のリメイクが注目を集めました。これは、当時の視聴者であった30代〜40代の購買力と、配信プラットフォームの充実が背景にあると考えられます。2026年には、『魔法騎士レイアース』『ハイスクール!奇面組』などのリメイクも既に発表されており、この流れはさらに加速すると予想されます。
3. 楽曲を軸に広がる作品の増加
アニメの楽曲や映像がきっかけとなり、作品が「発見」される現象が2025年に顕著になりました。『転生おじさん』の「マツケンサンバ」や、『野原ひろし 昼メシの流儀』などがその例です。これまでの「アニメが人気→楽曲が注目」という流れから、「楽曲が拡散→アニメが発見」へと逆転する傾向が見られます。特にTikTok発のバズでは、印象的なシーンやダンス、音楽の切り抜き動画が拡散され、一気見視聴につながるケースが多く、2026年にはこの傾向がさらに強まるでしょう。
4. 放送中7週目以降に伸びる作品の増加
2025年で特に印象的だったのは、『銀河特急ミルキー☆サブウェイ』のように、初速は低調でも、YouTubeでの全話公開やショート形式での展開により、後から大きく視聴を伸ばす作品の登場です。『羅小黒戦記』も劇場版公開をトリガーに、初速圏外から8週目に維持率400%を記録しました。これらの作品は、配信プラットフォームや外部トリガーを巧みに活用しており、2026年もこうした「ダークホース」的な作品が生まれる可能性が高いと考えられます。
マーケティング・現場視点から見た4つのトレンド(大貫佑介氏)
1. 2期や3期、過去の名作のリメイク発表の増加
アニメ化可能な原作の枯渇が進む一方で、アニメビジネスへの参入企業が増加しています。企業は「わかりやすい実績がある原作」をアニメ化する傾向が強いため、既存の成功作品の続編やリメイクが増えることが予想されます。オリジナル作品の企画ももちろんありますが、人間の心理として「過去の実績があるコンテンツ」が信用されやすいため、この流れは今後2〜3年続く序章にすぎないかもしれません。海外市場で評価される作品が優先される傾向にある中、国内市場でも持続的なビジネスモデルの構築が望まれています。この点については、ゲームビズの記事でも言及されています。
2. 「アニメ」よりも「現実」が「コンテンツとして成立」してしまう
ブシロード代表の木谷高明氏が「現実が面白すぎる」と語ったように、近年、政治や有名人の不祥事、SNS上の珍事など、現実の出来事がコンテンツとして大きな話題を呼ぶ傾向が強まっています。テレビ報道やSNSトレンドなど、あらゆるものがメディアミックスされ、「現実そのものがコンテンツ化」していると言えるでしょう。特にリアリティ系コンテンツの流行・拡大は、アニメ業界にとって競合が増えることを意味します。国内をメインターゲットにしていない現在のアニメ業界が、この「コンテンツ化した現実」といかに向き合うかが課題となるでしょう。
3. 若者のアニメ離れ(のようなことをいう人が出てくる)
「若者のアニメ離れ」という言説が今後出てくる可能性が指摘されています。実際には、アニメを好む層は変わらず視聴しており、アニメそのものの人気が低下しているわけではないと考えられます。しかし、現在制作されるアニメの多くは、転生、成り上がり、バトルといった海外市場を意識したジャンルに集中しており、国内向けのみでの収益化が難しいのが実情です。海外向け作品が日本でも多く放送されることで「アニメブーム」のように見えますが、実態としては供給量の増加と似た構造の作品の飽和感が、視聴者の「飽き」につながり、「若者のアニメ離れ」という表面的な解釈を生む可能性があると推測されます。国内市場での持続的なビジネスモデルの構築が重要だと考えられます。
4. 冒頭に見せ場がMAXな切り抜きや広告の増加
現代ではSNSなどで情報が氾濫し、コンテンツはすぐに飽きられがちです。そのため、アニメの宣伝においても「冒頭がセンセーショナル」で議論を呼ぶようなクリエイティブが効果的であると語られています。新規層を獲得するためには、ネタバレを恐れず、ある程度の「クライマックスのダイジェスト化」が避けられない状況です。視聴者は「この先面白くなるか分からないコンテンツ」を長時間視聴することにハードルを感じており、この消費行動の変化への適応が、2026年以降のアニメ業界にとって重要な問いとなると考えられます。
まとめ
データアナリストの湯通堂氏とマーケターの大貫氏による8つのトレンド予測は、「初速依存からの脱却」と「長期的な視聴者関係の重視」という共通の方向性を示しています。2026年のアニメ業界は、短期的な話題性だけでなく、コアファンとの深い関係性を築く方向にシフトしていくことでしょう。
これらの予測はあくまで現時点での仮説であり、その妥当性の「答え合わせ」は2026年末に行われることになります。アニメ業界を取り巻く環境は、技術進化や市場構造の変化、視聴者の行動変容によって、想定以上のスピードで変化し続けています。アニメデータインサイトラボは、今後もデータと現場の声をもとに分析を継続し、予測の検証を通じて、次なるアニメビジネスのヒントを探求していく予定です。
2026年が、皆様にとって希望と飛躍に満ちた素晴らしい一年となりますことを心よりお祈り申し上げます。
プロフィール
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湯通堂 圭祐氏:株式会社SevenDayDreamers代表。元株式会社マクロミルでデータサイエンティスト、FiNC Technologiesでデータ分析やプロダクト開発などを担当。現在はデータとAIを活用し、コンテンツIPの価値最大化に取り組んでいます。
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大貫 佑介氏:アニメデータインサイトラボ代表、コンテンツ・IPビジネスプロデューサー。株式会社ブシロードムーブ代表取締役社長、株式会社ゲームビズ代表取締役社長、新日本プロレスリング株式会社社外取締役を兼任し、ブシロードグループのアニメ・ゲーム・音楽のメディアミックス展開を統括しています。
©️Anime Data Insight Lab



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