国立映画アーカイブが贈る、アメリカ実験映画の新たな地平
国立映画アーカイブは、2026年1月15日から2月8日にかけて、ニューヨークを拠点とする「アンソロジー・フィルムアーカイブス」との共催企画「アンソロジー・フィルムアーカイブス――アメリカ実験映画の地平へ」を開催いたします。本企画では、日本ではこれまで上映機会が限られていた、あるいは未上映であったアメリカ実験映画、個人映画、インディペンデント映画の珠玉の115本(23プログラム)が紹介されます。貴重なフィルムでの上映を通じて、映像表現の既成概念を覆す豊かな世界を体験できる、またとない機会となるでしょう。

アンソロジー・フィルムアーカイブスとは
アンソロジー・フィルムアーカイブス(Anthology Film Archives)は、映像作家たちが中心となり設立された、世界的に見ても非常にユニークなインディペンデント組織です。「周縁の豊かさこそ文化を活気づける」という確固たる信念のもと、映画史において見過ごされがちな個人映画や実験的な映像作品の保存、研究、上映に尽力しています。
第二次世界大戦後のアメリカでは、16mmカメラやスーパー8などの普及により、個人や小規模なインディペンデントによる実験的試みが活発化しました。特に1960年代のニューヨークでは、映像作家、詩人、音楽家、美術家が分野を超えて交流し、フリージャズやポップアートといった文化的潮流と共鳴しながら、アンダーグラウンド映画のムーブメントが形成されました。そして1970年、詩人・映像作家のジョナス・メカスらが創設者となり、アンソロジーが誕生しました。


企画の見どころ
既成概念を覆すラディカルな作品群
本企画では、1960年代アンダーグラウンド映画の若き才能として注目されたロン・ライスやデイヴィッド・ブルックス、ジョナサン・デミやポール・トーマス・アンダーソンが敬愛する反体制的なインディペンデント映画の伝説的監督ロバート・ダウニー・シニア、ジョン・ウォーターズらに影響を与えたクッチャー兄弟、サイケデリック時代に先駆けた異才ハリー・スミス、そしてジョナス・メカスをはじめとするアンソロジーの創設者たちの作品が一堂に会します。これらは、米国の実験映画、個人映画、インディペンデント映画の歴史に偉大な足跡を刻む作家たちの創造性を体感できる機会となるでしょう。


復元によって蘇った女性映像作家の作品群
ジョナス・メカスにも多大な影響を与えたニューヨークアンダーグラウンドの重要人物であるマリー・メンケン、そして「アヴァンギャルドの中で最も非利己的なチャンピオン」と称されたマージョリー・ケラーの短篇群が、アンソロジーによる復元16mmフィルムで紹介されます。また、ニューヨークのフェミニスト・コレクティブを考察したリジー・ボーデンの初長篇作品『リグルーピング』(1976)と、現在フェミニスト映画の古典とされる近未来SF作品『ボーン・イン・フレイムズ』(1983)も上映されます。


アンソロジー・フィルムアーカイブスのキュレーションプログラム
1970年の設立以来、アンソロジーの活動の中心を担ってきた上映プログラムの中から、ニューヨークで話題を呼んだ5つのプログラムより厳選された作品群が紹介されます。映画の構成要素を問い直す「イメージレス・フィルムズ」や「モーション(レス)・フィルムズ」、ドキュメンタリー映画制作の倫理的側面を問う「ドキュメンタリー・フィードバック」と「オーディオビジュアル・フィードバック」などが含まれます。さらに、2025年11月からアンソロジーで開催された「アヴァンギャルド広告」では、商業目的で制作された広告映像や、依頼主から却下されたアヴァンギャルドなCMを通じて、“非商業的”とされてきた映像作家とその作品の再定義を促します。


識者によるトークイベント
会期中には、アンソロジーからアーキビストのジョン・クラックスマン氏とプログラマーのジェド・ラプフォーゲル氏を招いた講演をはじめ、国内の識者による講演やトークイベントが多数開催されます。作品の背景や意義を深く理解するための貴重な機会となるでしょう。
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1月17日(土)12:00の回 『時を数えて、砂漠に立つ』上映後講演 登壇者:一之瀬ちひろ氏(写真家・研究者)
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1月18日(日)12:00の回 『トム、トム、笛吹きの息子』上映後講演 登壇者:西嶋憲生氏(映像研究者)
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1月24日(土)13:00の回 「抽象アニメーション作品集」上映後講演 登壇者:山村浩二氏(東京藝術大学教授、アニメーション作家)
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1月24日(土)19:00の回 「モーション(レス)・ピクチャーズ」上映後トーク 登壇者:伊藤高志氏(映像作家)、山下宏洋氏(イメージフォーラム・フェスティバル ディレクター)
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1月28日(水)19:00の回 「アンソロジー・フィルムアーカイブスの創設者たち」上映後解説 登壇者:当館研究員
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1月31日(土)13:00の回 「ロン・ライス作品集(2)」上映後講演(逐次通訳付き) 登壇者:ジョン・クラックスマン氏(アンソロジー・フィルムアーカイブス アーキビスト)
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2月1日(日)13:00の回 「アヴァンギャルド広告」上映後講演(逐次通訳付き) 登壇者:ジェド・ラプフォーゲル氏(アンソロジー・フィルムアーカイブス キュレーター)
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2月7日(土)12:00の回 『リグルーピング』上映後オンライントーク(逐次通訳付き) 登壇者:リジー・ボーデン氏(監督)
巡回情報
本企画の一部作品は、東京での開催後、以下の都市でも巡回上映が予定されています。
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福岡:2026年2月5日(木)-2月22日(日)@福岡市総合図書館 映像ホール・シネラ
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京都:2026年2月~3月 予定 @京都文化博物館フィルムシアター
詳細は各機関のウェブサイトをご確認ください。
開催概要
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企画名:アンソロジー・フィルムアーカイブス――アメリカ実験映画の地平へ
(英語タイトル:Anthology Film Archives: Surveying American Experimental Cinema) -
会期:2026年1月15日(木)-2月8日(日) ※月曜休館
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会場:国立映画アーカイブ 長瀬記念ホール OZU[2階]
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公式ウェブサイト:https://www.nfaj.go.jp/film-program/anthology202601/
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主催:国立映画アーカイブ、アンソロジー・フィルムアーカイブス
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問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
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チケット:一般1300円、65歳以上1100円、高校・大学生700円、小・中学生・障碍者手帳をお持ちの方(付添者は原則1名まで)・国立映画アーカイブのキャンパスメンバーズ500円


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